震災記録映画でヤラセ 制作側は釈明
東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町のラジオ局に密着したドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」(12年8月公開)に、「やらせ」があったと5日、報じられ、ボランティアでナーションを担当した俳優・役所広司が同日、公式ホームページで「記事を読んで愕然としました」「この映画は二度と上演されるべきではない」などと怒りのコメントを発表した。
映画は大手広告代理店の博報堂が企画・製作し、同社社員の梅村太郎氏ら2人が監督を務めた。梅村氏は同日、フェイスブックで「ドキュメンタリーとして許される範囲の『演出』」と釈明した。
「ガレキ‐」は震災から2カ月後に開局した災害ラジオ局「FMみなさん」と町民の姿を描いたドキュメンタリー。娘と孫を津波で失った女性がラジオに励まされる場面が描かれるが、実際はラジオを聴いておらず、制作側の求めに応じて演技をしていることが判明した。
【以下、梅村氏のコメント】
「ガレキとラジオ」の製作は、3.11後に南三陸町に生まれた災害FMラジオ局「FMみなさん」を通じ、町が再生へ向かおうとしている姿を、震災を振り返るために残したいという想いで始まりました。地元の皆さまのご賛同を頂き、撮影スタッフは自分たちで調達した車に泊まり込み一年近く必死でラジオ局を撮影しつづけました。
ご出演頂く候補の皆さんにお話をお伺いし、その中でとある方に出会い、その方から避難生活のさみしさを伺いました。しかしながら、その方は「FMみなさん」の電波が届かない地域にお住まいでしたので、ラジオ番組を録音したCDを提供し、聴いて頂いておりました。
当然、ご本人、ご家族の了承を頂き、撮影を行いました。映画の公開後も、その思いがけぬ広がりを喜んでくださっていましたが、現在はご心労をおかけしておるとのことを、大変申し訳なく思います。
以上は、ドキュメンタリーとして許される範囲の「演出」として考えておりました。しかし、それがドキュメンタリーを逸脱したものだというご指摘は真摯に受け止めたいと思います。
私たちはできることであれば、今後も、「映画で東北を知る支援」の活動を継続していきたいと願っています。このたびは、お騒がせ致し誠に申し訳ございません。