NHKがやらせ疑惑の中間報告
昨年5月放送のNHK「クローズアップ現代」など2番組でやらせ行為があったと週刊誌報道で指摘された問題で、NHKは9日、NHK放送センターの記者クラブで中間報告会見を行い、また公式ホームページに中間報告の文書を掲載した。
問題になっている昨年5月14日放送の「クローズアップ現代」は、多重債務者を出家させて名前を変えさせ、金融機関から多額の住宅ローンを騙し取る「出家詐欺」の実態と背景に迫り、その対策を探ることをテーマに制作された。
その中で「ブローカー」とされたA氏が週刊誌報道後、代理人弁護士を通じて「記者の指示によるいわゆるやらせがあり、(ブローカーではない)A氏がブローカーとして放送された」として、放送での訂正を求めている。
調査委員会は検証のポイントとしてまず、記者が演技を依頼したかどうかについて、記者と「ブローカー」とされたA氏、仲介役のB氏の証言が食い違っていることを明らかにした。
A氏は撮影前に記者から「A氏がブローカー役を、B氏が多重債務者役を演じるよう依頼された」と話しており、記者は、撮影の事前説明として音声を変えて映像も加工することなどを説明したもので「演技の依頼はしていない」と否定、B氏も「記者が演技を依頼したことはない」と話しているという。
そして撮影場所のビルの一室が「活動拠点」であったかどうかについては、「相談場所の設定に記者の関与は認められないが、『活動拠点』とコメントしたことは誤りであり、裏付けが不十分であった」とした。
またA氏を「ブローカー」と伝えたことについては、インタビューの中でA氏が出家詐欺の手口を詳細に語り、「われわれブローカー」と称したことを指摘、記者の認識とA氏の主張が大きく食い違っていることを明らかにした。
さらには指摘されている「構成が適切さを欠いていた」ことや「相談場面の撮影方法」については、「検証をさらに進める必要がある」と、今後の課題としてとらえた。
B氏が本人の言うとおり多重債務者であるかどうかについては、B氏が提出した資料をNHKの職員弁護士が点検、「多重債務者と言える」と判断した。
A氏への口止め依頼については、B氏が「話が週刊誌に出ると騒ぎになると思ったもので、『足代を払うから止められないか』とA氏に電話した」ことを認め、その際「『記者が払う』という言い方をしたかもしれない」と証言。一方、記者は「B氏にそのようなことは頼んでいない」と口止め依頼を否定している。
以上のこれまでの検証を元に、調査委員会は今後の対応として「取材・制作のプロセスや放送内容が適正だったのか、関係者の話が食い違う点を中心にさらに事実関係を明らかにするための調査を進める」とし、NHK関係者や外部からの聞き取りに際しては調査の公平性・透明性と高めるために外部委員の所属事務所の弁護士に立ち会いを依頼することも明らかにした。
また番組の取材・制作のチェック体制についても調査を進め、改善策も検討するという。
NHKは今月3日、この問題に関して調査委員会を設置した。委員会では「やらせ」があったかどうか、取材制作のプロセスや放送内容が適切であったかどうかについて事実関係を明らかにし、必要な再発防止策を講じ、その内容を「調査報告書」にまとめて公表するとしている。