又吉芥川賞受賞 お笑い界初の快挙
第153回芥川賞の選考会が16日、都内で行われ、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(35)の著作「火花」が受賞した。お笑い芸人の受賞は史上初の快挙。純文学界の“新人賞”的位置づけの同賞を受賞したことで、又吉の作家としての存在感がさらに増しそうだ。もう1人の受賞者は羽田圭介氏の「スクラップ・アンド・ビルド」。
選考委員の1人、山田詠美氏は受賞作発表後、都内で会見し、選考経過を説明した。山田氏は「最初の投票で、一番低かったのが、内村薫風さん。一番高かったのが又吉くんでした」と最初の投票では又吉が最多票を獲得したことを明かした。
二番目に低かった島本理生氏と内村氏の2つがまず候補から漏れ、意見を出しながら高橋弘希氏も落選。又吉を含む3作品で闊達な討論が行われ、2回目の投票で又吉と羽田氏が残り、同点で2作受賞となったという。
「火花」については「又吉くんの方はどうしても書かなければならない切実なものが迫ってくる感じで。欠点も多々あるのですけど、何か強いものを感じて、主人公とカリスマのような先輩のまさに火花が散るような関係がうまく書けていました」と評価した。
又吉は発表約6時間前の16日午後1時過ぎ、都内でイベントに出席。「いろいろ期待していただいて、地元の小中学校でも、(芥川賞)取った時の垂れ幕を用意してると聞いて、申し訳ないです」と不安を口にしながらも、「どうなるか分からないんでねぇ、まぁでもありがたいことですよね。(候補に)取り上げていただけて。難しいとは思うんですけど、期待はしたいです。せっかくなので」と吉報を待つ胸中を明かしていた。
又吉にとって初の本格的小説となった「火花」は売れない芸人の徳永と、先輩芸人・神谷の2人を描いた物語。文芸作品の愛好家である又吉の初の純文学作品として話題になった。3月に文藝春秋から出版後、増刷を重ね、累積発行部数は69万部。掲載誌の「文學界」2月号は通常1万部発行のところ累計4万部まで増刷された。1933年創刊の同誌史上初の増刷だった。
芥川賞には、以下の6作が候補に挙げられていた。受賞者には正賞の懐中時計と副賞100万円が贈呈される。
【候補作】内村薫風「ΜとΣ」、島本理生「夏の裁断」、高橋弘希「朝顔の日」、滝口悠生「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」、又吉直樹「火花」