ジャガーと千葉テレビの絶妙な関係
氣志團の綾小路翔やマツコ・デラックスら千葉県出身の芸能人が「地元千葉のヒーロー」としてリスペクトするジャガー。マツコと関ジャニ∞の村上信五がMCを務める日本テレビ系「月曜から夜ふかし」で昨年から今年にかけて何度も紹介されたことにより、知名度が上昇している。
そのジャガーが5月6日から千葉テレビ(以下チバテレ)で伝説の冠番組「ハロー・ジャガー」を毎週金曜夕方に復活させた。全国ネット進出から一転の原点回帰。地域に根ざしたローカルタレントと地元メディアのあるべき姿をジャガーとチバテレとの関係を通して考察してみたい。
チバテレによると、ジャガーは「千葉県民なら誰でも知っているロックミュージシャン」。出身は「ジャガー星」。地球での仮の姿は「洋裁チェーン店などの経営」。その実業家としての経済力でチバテレの放送枠を個人で買い取り、1985年10月~94年3月の長期に渡って自身で撮影、編集した5分番組「ハロー・ジャガー」を放送していた。
綾小路やマツコ世代は80年代後半の多感な少年時代に“ジャガー体験”をしていたことになる。たった5分でも、日常生活の隙間、夕暮れの“逢魔(おうま)が時”に出くわす非現実的な映像は強烈なインパクトを残したことだろう。ちなみに2005年~06年と、10年にも放送され、今回が第4期となる。
チバテレを見る機会のなかった筆者がジャガーを初めて認識したのは、東京進出前のダウンタウンがMCを務めていた関西発の深夜番組。みうらじゅんがサブカル的な人物や事象を紹介するコーナーにゲストで登場した時だった。MBSの「働けダウンタウン」(88年10月~89年3月放送)だったかと思う。
この時期のジャガーは、「ランナー」が大ヒットしていた爆風スランプの代役ベーシストとして音楽番組に出演し、「ジャガー現象」という曲でメジャーデビュー。前述の番組でもこの曲を歌い、その不思議な体の動きを、浜田雅功にいじられていた記憶がある。
話を戻そう。では一体全体、肝心の「ハロー~」とはどんな番組なのか。4月に行われた会見で本人が次のように説明している。
「(番組内容は)ジャガーそのものでありまして、ジャガーがトークをして、1人でカメラに向かってしゃべって、自分で編集して、千葉テレビさんに納品して、放送しておりました。ですから、プロデューサー兼・出演者兼・スポンサーでありました」。今回も5分番組で従来のスタイルを踏襲。トークや、「ファイト!ファイト!ちば!」「だまってジャガーについて来い!」といった代表曲のPVを流すという。
もともとのきっかけは実業家としての商才にあった。「(それ以前は)CMを流していたのですが、費用の面で番組の方が時間が長く、お得になるというお話で、番組に切り替えたということであります」(ジャガー)。
局側の反応も聞いてみた。チバテレの広報担当者に千葉県民にとってジャガーとは何かと問うと、「唯一無二の存在です」と即答。今後のジャガーに期待することを尋ねると、「ぜひジャガー星にチバテレのジャガー星支社を作っていただきたいです」。この一体感が“強み”だと思う。東京都に隣接する首都圏にありながら、絶妙の距離感で独自のスタンスを保っている。
「くまもん」をはじめ、全国各地を代表するキャラクターが続々と生まれている時代。着ぐるみとは別に、「千葉のジャガー」のような生身のキャラの存在は大人にも訴求力がある。例えば、ジャガーと森田健作知事による、かみ合わなさそうな“千葉対談”が実現しないか?などと勝手に妄想してしまう。
(デイリースポーツ・北村泰介)