押切もえ「僅差」で山本周五郎賞逃す
「第29回山本周五郎賞」(新潮文芸振興会主催)の発表が16日、都内のホテルで行われ、湊かなえ氏の「ユートピア」(集英社刊)が受賞した。3回目の候補での受賞。モデルの押切もえ(36)の小説「永遠とは違う一日」(新潮社)は惜しくも受賞を逃した。得票数0・5差の僅差での落選だった。押切にとっては2作目の小説で、短編小説6編を1本にまとめた作品。
都内の出版社で、編集者、マネジャーとともに吉報を待っていたという押切。受賞はならなかったが、ツイッターで「最後まで候補に残ったと聞き、とても嬉しかったです。お褒めのお言葉に胸を打たれ、とても晴れやかな気持ちです。応援してくださった皆さん、本当にありがとうございます!これからも頑張りますね!」と感謝の思いをツイート。ブログでも感謝を記した。
選考委員の佐々木譲氏は会見で選考過程を説明。押切の作品について、湊氏の作品とは、投票で0・5差の「大変僅差だった」ことを明かした。W受賞も検討されたが、山本周五郎賞の規定上、W受賞はできず、湊氏の1作品に絞ったという。
選考委員の間では「文芸の世界でないところからやってきている方なのに、非常にうまい。巧みな構成は2作目で大変なもの。きちっとした文学になっている」(佐々木氏)と高く評価されており、「これだけの才能を持っている方なので、次の作品を楽しみにしたい。選考委員一同、長編を読んでみたいという声が出ていた」と次回作への期待が高かったことも明かした。
佐々木氏はモデルと作家の二足のわらじについて「文芸の世界を活気づけるのでうれしく思う。押切さんのような方が文芸に真摯に向き合って、発表して、読者が増えるのは大いに歓迎」と話した。
押切は13年に処女小説「浅き夢見し」(小学館)を出版。15年1月から16年1月までに雑誌「小説新潮」で短編小説を6本連載し、1本にまとめたのが「永遠-」。
湊氏の受賞作品は最初の投票からトップの得票数。5作品中、得票数の高かった押切の作品、相場英雄氏の「ガラパゴス」(小学館)の3作で議論が練られた。