元世界王者・石田が引退「楽しかった」
ボクシングの元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者・石田順裕(39)=グリーンツダ=が19日、現引退を表明し、大阪市内で会見した。
世界の層が厚く日本人にとっては難関の中・重量級で世界を舞台に暴れた日本ボクシング界の革命児。波乱のボクサー人生を「暫定とはいえ世界王者になり、世界で戦ってきた。ヘビー級にも挑戦し、他の選手ができないことをできた15年できて楽しかった」と振り返った。
興国高3年の93年、高校選抜ライト級で優勝。近大時代は主将を務め、97年に国体ライト級2位に入るアマチュアエリートだったが、当初はプロにならず児童福祉施設職員として勤めた。
ブランクがありながら24歳時にプロ転向。188センチの長身でアマで培った華麗なアウトボクシングを武器に、01年、6戦目で東洋太平洋同級王座を獲得。34歳の09年8月、WBA世界スーパーウエルター級暫定王座決定戦を判定で制した。
最も輝きを放ったのが、11年4月、ジェームス・カークランド戦。日本人として初めて、米ロサンゼルス、格闘技界の聖地「MGMグランド・ガーデンアリーナ」に立ち、当時27戦全勝(24KO)の相手から1回に3度ダウンを奪い、TKO勝利で撃破。圧倒的不利の下馬評を覆し、権威ある米2誌の「アップセット(番狂わせ)・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
その後、ミドル級に転向し、海外で12、13年と2度の世界挑戦。いずれも王座奪取はならなかったが、プロ通算33戦33勝30KOで“最強王者”との評価も高いゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)にも挑んだ。(3回TKO負け)。
12年5月、ロシアでWBOのタイトルマッチに出場した際に日本ライセンスを返上したが、13年3月に再交付が認められた。晩年は「誰もやったことがないアホなことをしたい」と4階級も上のヘビー級に挑戦した。
前代未聞の「ヘビー級プロジェクト」で20キロも増量。元日本同級王者・藤本京太郎(角海老宝石)と2度に渡り激戦を演じた。昨年4月、ノンタイトル戦で判定惜敗すると、引退を撤回し、再戦を訴え。今年4月30日、同タイトルに挑戦し、再戦したが、藤本にまたも判定で連敗。気力、体力とも限界に達し、グローブをつるすことを決めた。
第2の人生は故郷の大阪府・寝屋川でアマチュア相手のボクシングジムを行う。「スポーツトレーナー資格も勉強中。30年、ボクシングと関わってきたし、色んな選手のサポートができれば」と語った。