力ともろさが共存する穂積

 ボクシングの元世界2階級制覇王者・長谷川穂積(34)の進退に関し、ネットでのファンの声は真っ二つに割れているようだ。

 「希代の名王者。決めるのは本人。納得するまでやって」という“現役続行支持派”。「衰えは明らか。家族にこれ以上心配をかけないように」という“引退勧告派”。

 間近で長谷川に接してきた記者にとっても、11日の試合は本当に判断の難しい激戦だった。WBO世界スーパーフェザー級5位・カルロス・ルイス(22)を迎えた人生最重量の57・6キロ契約で行ったノンタイトル10回戦。

 1、2回は中間距離から絶妙な左ボディーをさく裂。出入りのスピードで完全に相手を翻弄(ほんろう)した。

 3回に暗転。踏み込んだところに強烈な右ストレートを合わされ、崩れ落ちた。5回も同じタイミングで右を食らい、2度目のダウンを喫した。

 セコンドは“修羅場”だった。専属マネジャーも務める中辻啓勝トレーナーがタオルを握ると、真正ジムの江藤日出典会長代行は「投げたら終わりだぞ!」と、タオルをこん身の力で引っ張り合った。江藤代行は山下正人会長に「次、危なくなったら投げますから」と伝え、中辻トレーナーを押しとどめた。

 6回以降、セコンドはいつでもタオルを投げる準備。そんなギリギリの状況で長谷川は、不死鳥のようによみがえった。強打の右にひるまず、左を打ち込む。仕留めに来た相手のパンチを紙一重でかわす防御技術で観客に息を飲ませた。最終10回、コーナーに追い詰めると、左右の連打で相手は腰が落ちた。

 KOには至らなかったが、判定3-0で逆転軍配。「ダウンの2回以外はパーフェクト。完勝」の言葉通り、ラウンドごとのポイントは確かに長谷川が上回った。

 試合後には「世界5位に競った試合ではないレベル。40戦のキャリアの成果」と強気過ぎるコメントに終始した。一方でリング上では「これが実力。進化?劣化じゃないですか」と自虐的に話した。

 もともとはWBC世界バンタム級王座を10度防衛した名王者。そこから3階級も上の世界ランク5位を下した事実をみれば、力は健在といえる。

 しかし、もろさが共存する。変幻自在の動きとスタミナで試合を支配しながら、鼻骨を折るなど、深刻なダメージを食らったのは明らかに長谷川だった。

 野球に例えれば、どんな一流投手でも1試合に失投は何球かあるという。失投の被害を最小限に食い止めるか、大崩れするかが、一流か否かの差。今戦で2度、同じ過ちをした長谷川は本来なら“降板”のはずが、投球術で最終回まで投げ抜き、完投勝利した。

 「負けたわけじゃない。辞めるとは一言も言っていない。いい話があれば」。今後、去就は熟考するものの、現役続行に前向き。山下正人会長は次戦、夢の米国進出も視野。世界再挑戦に向け、スーパーバンタム級、フェザー級の4団体すべてに照準を合わせる。

 16日に35歳になった長谷川。12ラウンド、“失投”なしで戦えば、11年4月にWBC世界フェザー級王座を陥落して以来、5年ぶり返り咲きの可能性は十分にある。最後の花道を、記者も何とか飾ってほしい。だが“失投”を逃さないのが一流打者。リゴンドー(キューバ)、ロマチェンコ(ウクライナ)ら怪物ひしめく8つの世界王座に二流の王者はいない。(デイリースポーツ・荒木 司)

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