田中一樹、デンカオセーンKOし5連勝
「ボクシング54・7キロ契約8回戦」(3日、エディオンアリーナ大阪第2競技場)
名門グリーンツダ売り出し中のホープで東洋太平洋スーパーバンタム級11位・田中一樹(23)が元WBA世界フライ級&スーパーフライ級暫定王者のデンカオセーン・カオウィチット(39)=タイ=を2回1分53秒KOで破り、デビュー5連勝(4KO)を果たした。
相手は坂田健史、亀田大毅、久高寛之、名城信男を下してきた“日本選手キラー”。1回、田中がワンツーをヒットさせ、ぐらつかせると勝負は2回。衰えたとはいえ、接近戦は往年の迫力を見せる39歳に被弾しながらかまわず応戦。最後は左ボディーを打ち込み、体をくの字に折って、リングに転がした。
元世界2階級王者は試合後、引退を表明。引導を渡し、ビッグネーム狩りに成功した田中は「向こうが世界王者。でも練習は充実していたのが、この結果になった。もっと楽に倒せたんじゃないかな。練習していた左ボディーが本当に当たるとは。今年はランクを上げる年。会長、強いやつとやりましょう」とリング上ではノリノリで喜んだ。
中学生時に見ていたデンカオセーン。その最後の相手がまさか自身になるとは思いもしなかった。「偉大な王者だった。次は僕がボクシングを盛り上げていく番」と、試合後は感慨に浸った。
枚方市出身で世界3階級王者・井岡一翔(27)=井岡=らを輩出した興国高、強豪の龍谷大で主将を務めてきた。ボクシングエリートは幼少よりたくましく育った。
キックボクシングを始めたのが小2の時。格闘技経験は一切ない父・正樹さんは英才教育を施した。タイ式ボクシング(ムエタイ)を学ぶため小6時には単身でタイのジムに武者修行。1人で初めて飛行機に乗せられバンコク到着まで「ずっと機内で泣いていた」。
辛い料理が食べられず、白ご飯だけの日々。タイ語のメニューが分からず注文したら「カエルの腸」だった。やせ細る中、タイ人にはボコボコにされた。挙げ句、デング熱にまでかかった。
中学に入っても夏、冬、春休みのたびにタイ修行。「ひげの生えたニューハーフ」から「カズキー♡」とエールを送られながら朝、夕のロードワークをこなした。
破天荒な男は高校時、コンビニでワル仲間とたむろしているところを本石昌也会長にスカウトされた。会長は「華がある」とゾッコン。大学を終えた後、自然な流れでグリーンツダに入った。
愛称は「エリートヤンキー」。以前はパンチをもらうと、怒りで我を見失っていたが、試合を重ねる度に冷静に対処できるようになってきた。「ちょっとだけ有名になったかな。でも調子には乗らないように」。スター候補が2016年初戦を満点スタートした。