阪神反攻のカギは和田采配にあり
サッカーW杯が佳境を迎える中、日本のプロ野球もセ・パ交流戦がほぼ終了し、セの原巨人が2年ぶりの優勝を飾った。分厚い戦力を有し、粘り強く勝ち星を稼いでいった巨人とは対照的に、和田阪神は9勝15敗と失速、交流戦前にあった6つの貯金をすべて吐き出してしまった。
首位巨人と5・5差をつけられての3位という現状は、その戦力差を考えれば上出来と見る向きもあるが、決してそうではない。現役時代、通算320勝を挙げた“虎のご意見番”小山正明氏は「勝てる試合をいくつ落としたんや!周囲が『何で?』と思う負けが結構あったで」と今年の交流戦を総括する。
その最たる例が、6月3日の楽天(1)戦(コボスタ)だという。29勝25敗の貯金4で迎えたこの試合、先発はメッセンジャー。相手投手はエース・則本だったが、阪神は七回に先制し、則本が降板した八回にゴメスの一発で2点を追加した。メッセの出来もよく、八回終わって無四球の1安打投球。完封勝利も目前だった。
ところが、九回表に打席に回ってきたメッセンジャーが四球を選び、走者として長時間塁に止まった挙げ句、無得点で、その裏に痛恨の逆転サヨナラ負けを食らうという悲劇に見舞われた。小山氏は「何で『3回振って帰ってこい』という指示を出さないんや?あの状況で塁に出る必要なんかない。ベンチがちゃんと指示してやらなんとダメやろ。しかも、まだ余力があるのに代えてしもた」と憤慨した。ベンチワークの拙さが、3‐0の試合をサヨナラで落とす要因になった。
6日のオリックス(3)戦(甲子園)でも七回まで3‐0でリードしながら八回に4点を奪われ逆転負け。継投失敗が目立つ和田采配に多くの「?」がついたが、それ以上に選手起用そのものに対する“一貫性のなさ”が虎党を落胆させている。2009年から3年間、真弓政権下で参謀役の野手チーフコーチを務めた岡義朗氏がこう指摘した。
「新人捕手の梅野や緒方を起用してチームの活性化を図ったが、少しミスするとすぐに代えてしまう。梅野なんかは4位や5位という状況で使うんじゃなくて、上位にいる今だからこそ使い続けるべきだろう。緒方にしてもそう。確かにチョンボが多いタイプの選手だけど、育てると決めて使う以上、少々のミスは我慢しないと…。首脳陣には“使う勇気”も必要だと思う」
梅野や緒方の起用方法もさることながら、今年はオープン戦から三塁で勝負させてきた今成と新井良の2人を右翼で先発出場させたことも、方針のブレが否めなかった。「阪神の野球とは一体何なのか?その原点にもう一度立ち返るべきじゃないか」と岡氏。交流戦という特別な期間が生んだ悪循環に、阪神はズッポリとはまってしまった感がある。
5月以降、2連勝がわずか2回しかないという和田阪神。気がつけば4位・中日との差が「1」まで縮まり、27日から甲子園で直接対決する。中日はおろか、ヤクルトやDeNAも決して楽な相手ではない。何せ、最下位・DeNAまで4・5差(24日現在)しかないのだ。
小山氏は「ない袖は振れないのだから現状の戦力でやり繰りするしかない。打者はボール球を振らない。先発陣は可能な限り完投を目指す。和田監督にはこれを徹底させてほしい」とし、返す刀で「上位はおろか、最下位の危険性を考えないといかん状況は情けない」と断じた。
開幕カードで負傷した西岡が1軍復帰を果たし、ムードが変わりそうな感もあるが、小山、岡両氏共に「反攻のカギを握っているのは和田監督自身。ブレずに一貫性のある采配で選手を鼓舞してもらいたい」と話し、後半戦反攻のキーマンは和田監督であるとした。就任3年目の初夏。和田政権は最大の正念場に差しかかっている。