柔道平岡が銀…北京の雪辱ならず

 男子60キロ級で獲得した銀メダルを手に笑顔を見せる平岡拓晃=エクセル(共同)
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 「ロンドン五輪・柔道男子60キロ級・決勝」(28日、エクセル)

 柔道男子60キロ級の平岡拓晃(27)=了徳寺学園職=が決勝で一本負けしたものの、銀メダルで今大会日本勢に最初のメダルをもたらした。準決勝では、開始早々に技ありでポイントを奪い、その後も攻撃の手を緩めず、見事に一本を取る会心の勝利。しかし、金メダルにはあと一歩届かなかった。

 最後の最後で悔いが残った。決勝戦、開始早々に攻め込んだ流れの中でガルスチャンの投げをくらい、背中からたたきつけられた。日本人今大会初のメダルは銀。その瞬間、平岡は天を仰いだ。

 「金メダルだけを考えて、この4年間やってきたので悔しい。金メダルでお礼を言いたかったので情けない」‐。

 とはいえ、男の意地は見せた。準々決勝、フランス選手の変則的な組み手に翻ろうされ、指導2つをもらう大ピンチ。しかし、残り7秒、起死回生の足技で追いつくと、ゴールデンスコアでも責め続け旗判定の末、勝利。準決勝をわずか1分8秒で一本勝ちした。

 4年前、北京ではまさかの1回戦負けに終わった。代表決定直後の5月に、左ひざを負傷。それまで3連覇していた野村忠宏の幻影に焦り、最後まで自分の柔道を取り戻せなかった。「やっぱり野村を出しておけば良かった」。周囲の心無い言葉が胸に突き刺さった。「五輪の借りは五輪でしか返せない」。リベンジに向け、ひたすらに柔道と向き合った。

 苦闘の4年を支えてくれたのは、母雅子さんだ。北京後には乳がんが発覚。「自分が心配を掛けたから」。平岡は自分を責めた。それでも母は息子のために減量食を作り続けてくれた。「今度こそ、母に世界一になるところを見せたい」と、心に決めていた。

 そしてもう1人、苦しい時を支えてくれたのが、11年3月に結婚した元女優の真汐夫人だった。同年6月には第1子となる長女花菜ちゃんが誕生。妻は闘病中の母に代わり、工夫をこらした減量メニューを作ってくれた。結婚式もロンドン後まで、待ってくれていた。妻の献身に結果で応えたかった。

 大好きなとんかつを1年以上も我慢して、つかんだ五輪メダル。息子として、夫として、そして日本男子柔道の主将として‐。平岡は十分に重責を果たした。

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