吉田沙保里、旗手の大役に「最高」
ロンドン五輪の開会式が27日(日本時間28日)、五輪スタジアムで行われた。日本は入場行進で95番目に登場。レスリング女子で3連覇に挑む吉田沙保里(29)=ALSOK=が笑みも浮かべながら、旗手の大役を務めた。1908年、48年に続いて、同一都市で最多となる3度目のロンドン大会には、204の国と地域から約1万500人の選手が集い、17日間の戦いを繰り広げる。
胸を張り、日の丸を左右に振りながら、ゆっくりと歩を進めた。日本選手団の先頭で、旗手を務めた吉田の口元には笑みが浮かんでいた。「最高の舞台で最高の役目を任せられ、最高の気持ちです」。3度目の五輪。すっかり慣れている舞台とはいえ、大役の味は格別だった。
入場行進で、日本はアルファベット順で95番目に登場した。その前を行進したジャマイカの旗手は、陸上男子100メートル、200メートル世界記録保持者のウサイン・ボルト。世界のスーパースターにくぎ付けにされた8万人の大観衆の目は、吉田にも注がれた。
赤いジャケットに、白のズボン姿。吉田は風で旗が巻き付かないようにと注意しながら歩き、途中で観客席に手を振る余裕も。「五輪の重みが旗にあった」。開会式は深夜1時までの約5時間にわたる長丁場だったものの、日本女子レスリング界のエースは、両手に残る感触に浸っていた。
吉田は5月の国別対抗戦、W杯で4年ぶりの敗戦を喫した。旗手の打診を受けた日本レスリング協会の高田裕司専務理事は「負けたので、正直やらせたくない気持ちもあった」と複雑な胸中を明かしたが、吉田は「名誉なこと」と迷いはなかった。
8・9大一番 3連覇に挑む試合は、8月9日に行われる。普段の海外遠征では、試合の5日ほど前に現地入りするが、今回は練習パートナーらとともに一足早くロンドン入りした。「競技で金メダルを目指して頑張ろうとの気持ちが、さらに強くなった」。大役を終えた女王の目は、すでに大一番へと向けられていた。