上川 2回戦敗退…男子柔道初の金ゼロ

 「ロンドン五輪・柔道男子100キロ超級・2回戦」(3日、エクセル)

 柔道男子が、歴史的屈辱に陥った。男子100キロ超級で上川大樹(22)=京葉ガス=が2回戦で敗退。1964年東京五輪での柔道採用後、日本男子は出場した大会で初めて金メダルゼロに終わった。一方、女子78キロ超級の杉本美香(27)=コマツ=は決勝でイダリス・オルティス(キューバ)に旗判定で敗れ、銀メダル。柔道が今大会で獲得した金メダルは一つで、男女14階級となったバルセロナ五輪以降最少だった。

 残り10秒、落日のカウントダウンが始まった。最後の砦(とりで)となった上川は2回戦でポイントをリードされたまま試合終了のブザーを聞くと、畳に両ヒザをついて放心状態。2012年8月3日、ニッポン柔道男子が崩壊した。

 「優勝しかない」。前日、100キロ級の穴井隆将が敗れて、上川は腹をくくった。1回戦は大外刈りで一本勝ち。だが2回戦の試合中盤、2分30秒すぎ、相手に背負い投げからけさ固めに入られ、19秒抑え込まれて有効を奪われた。上川は必死で体落としなどで逆転を狙ったが、もう逆転できる力はなかった。

 「自分が弱かった。ずっと金メダルが目標だったので悔しい」。上川は消え入るような細い声でつぶやいた。「今は試合が終わったばかり。一つ一つ整理して、リオデジャネイロ五輪を目指せるものなら目指したい」と言葉を絞り出すと、「もう、いいですか」と2度、質問をさえぎって控室へと消えた。

 88年ソウル五輪の再現はならなかった。金メダルゼロという今回と同じ状況で迎えた最終日の95キロ超級を制し、救世主となった全日本柔道連盟の斉藤仁強化副委員長は「人のことを気にせず、思い通りに自分の力を出し切ってほしい」とアドバイス。だが、上川は国内2度の代表選考会で敗退しながら“消去法”で選ばれた選手。英国のオッズメーカーでは日本の男子7階級で唯一、上川だけが「オッズなし」。「金」どころか「メダル圏外」の上川には荷が重かった。

 柔道とJUDOの間には近くて遠い距離がある。思えば、スタートの東京五輪無差別級で神永昭夫がヘーシンクに敗れた時点で、“お家芸”の苦難の歴史は始まっていた。その最たる象徴である『金0』により、日本柔道はロンドンの地で1度死んだ。この『終わり』を新たな『始まり』としなければ再興への道はない。

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