内村「銀」2冠逃すも最高Eスコア
「ロンドン五輪・体操男子種目別・床運動」(5日、ノースグリニッジ・アリーナ)
男女の種目別が始まり、男子床運動に出場した個人総合王者の内村航平(23)=コナミ=は全ての着地をミスなく決め、2位だった予選を上回る15・800点で銀メダルを獲得した。この種目での日本のメダルは、92年バルセロナ大会銀の池谷幸雄以来。前回北京大会でこの種目を制し、予選も1位の鄒凱(中国)が15・933点で2連覇を達成した。
頂点には届かなくても、突き抜けるような満足感があった。思わず「よっしゃ」と唇が動いた。最後まで寸分の乱れもない着地に、“ドヤ顔”も出た。
中国のスペシャリスト鄒凱には及ばなかったが、技の正確さを示すEスコア(実施点)では、出場選手中トップの9・1点をマーク。世界一の美しさで、銀メダルをもぎ取った。「そういう評価(Eスコア)をもらえたのはすごくうれしい。誰よりも美しい体操を目指しているので。銀メダル以上の価値がある」と胸を張った。
床は最もこだわりがある種目だ。「昔から誰よりもうまくなりたかった」‐。元体操選手の父和久さんの得意種目。父のインターハイ優勝の金メダルを見て、「僕もこれが欲しい」と、“頂点”を志した。
昨年、世界選手権の種目別で優勝した際も「これで父を超えたとは思わない」と漏らした。五輪で金メダルを取って、初めて父を超えられる。そう思い、極めようとしてきた。
日本のエースはさらなる飛躍に向けて、“必殺技”を準備している。五輪、世界選手権のどちらかで決めれば、“ウチムラ”の名が付く新技だ。「新技は2つぐらいできたら、という気持ちはある。床と跳馬。自分の名を残したいというのは体操選手なら誰でも思うこと。できれば誰にもできないような技をやってみたい」と話していた。
早ければ、来年の世界選手権(10月、ベルギー・アントワープ)でのお披露目も考えている。現在、内村が床で使用するG難度リ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)を超えるような夢の超絶技が、拝める日はそう遠くないはずだ。
これで全日程を終えた。日本人28年ぶりとなった個人総合の金よりも、悔しさの残った団体銀と、種目別への思いが口をついた。「五輪で金を取ることの難しさを痛感した。神様が僕に試練を与えたんだと思う」。2度目の夢舞台で味わった栄光と挫折を糧にして、王者はまた進化する。