室伏銅メダル「自分の年齢に勝てた」
「ロンドン五輪・陸上男子ハンマー投げ・決勝」(5日、五輪スタジアム)
室伏広治(37)=ミズノ=が3投目に78メートル71を投げ、銅メダルに輝いた。2004年アテネ五輪の金以来となるメダル獲得となる。パルシュ(ハンガリー)が80メートル59で優勝した。女子400メートル障害予選で久保倉里美(新潟アルビレックス)が55秒85の5組5着で2大会連続の準決勝進出となった。
瞳は少し潤んでいるようにも見えた。日の丸の旗を背負い、ゆっくりと競技場を1周すると、父重信氏、グスタフソン・コーチら支えてくれた「チーム室伏」のメンバーと握手を交わし、抱き合った。
4度目の五輪で手にしたのは、銅メダル。頂点を狙っていただけに悔しさはある。それでも「自分の年齢に勝てたことを誇りにしたい。色はともかく、やってきたことに満足はしてます」と、37歳という年齢でつかんだ勲章に胸を張った。
トラブルを乗り越えてのメダルだ。重要な1投目、室伏の投てきに、ファウルを指す赤旗が上げられた。判定はタイムオーバー。ハンマー投げの投てき時間は1分間あるが、直前に行われていた表彰式のどこを終了時間とするか、明確な説明がなかった。陸連を通じて異議を申し立てたが、通らず。「1投目に(4投目以降に進める)ベスト8、2投目にメダルを狙う記録を出すつもりだった」というプランを崩された。
さらに、2投目の前にはライバル、コズムスのハンマーがネットに掛かり、約20分間中断。終盤は男子100メートルの喧騒(けんそう)に支配され、集中を保つには厳しい状況だった。それでも、78メートル前後の安定した投てきを続けた。父重信氏は「年齢的にも3投目までに記録が出ないと厳しい。ただ、よくやったと思う。メダルも獲りましたし」と、息子の偉業に目を細めた。
アテネ五輪の金メダルは、ドーピングによる繰り上がりだったため、郵便で送られた。6日の表彰式では、初めて五輪メダルを表彰台の上でもらう。「前回はいろいろ問題があったから、直接もらえてない。良かったです」と心待ちにした。
すでに来年の世界選手権(モスクワ)挑戦は明言している。ただ、4年後のリオ五輪については「これが最後の五輪かもしれない。これからまたゆっくり考えたい」と話すにとどめた。38歳で自己ベストをマークし、41歳まで現役を続けた父は「本人にやる気持ちがあるかどうか。ただ、まだ理想は追求できる」。究極を求めてきた鉄人は、どこを終着点とするのだろうか。