伊調、重傷でも無敵!日本史上初3連覇
「ロンドン五輪・レスリング女子63キロ級」(8日、エクセル)
レスリング女子63キロ級で、伊調馨(28)=ALSOK=が8日、日本の女子選手では史上初となる五輪3連覇の偉業を達成した。日本勢の五輪個人種目3連覇は、柔道男子60キロ級の野村忠宏(ミキハウス)に次いで2人目。出場した7度の世界選手権に3度目の五輪を加え、世界一を決める大舞台で「10大会全勝」とした。伊調は本番4日前の練習中に左足首じん帯を部分断裂していたことを衝撃告白。“鉄の女”は現役続行を示唆し、4年後のリオデジャネイロ五輪での前人未到のV4挑戦に含みを持たせた。
涙はなかった。周囲の騒ぎをよそに、伊調本人は「3連覇の実感はあまりない。それを目標にしてきたわけではなかったので」と冷静に受け止めた。「3連覇って、なんか年取ったなぁって感じしますよね」と肩の力が抜けている。これもまた女王の貫禄だった。
髪形を『コーンロー』にして登場。ユニホームの胸に刻まれた猛虎マークのごとく、襲いかかった。決勝の相手は景端雪(中国)。世界選手権の67キロ級を連覇した強豪だが、1ポイントも与えず2‐0で料理した。
実はロンドン入り翌日の4日の練習中にアクシデントが起きていた。「左足首です。3本あるじん帯のうち1本半が切れ、次の日は練習会場にも行かずに選手村で治療し、炎症止めや痛み止めの注射を打ったり、ずっとアイシングしていた」。金メダルを手にしてから初めて打ち明けた衝撃の事実。情報が漏れていれば大騒ぎになっていたところだが、試合では重傷の影響を全く感じさせなかった。
「よりによって今かっていうのもあったが、イメージトレーニングをし、テーピングして戦った。決勝の前には痛み止めを1本打った。試合中には痛みを感じなかった」。6月にはぎっくり腰で合宿を回避したが、それらが致命傷にならないのが強み。「治りも早いし、まだ若い。マイナスには考えない」と逆境をプラスに転化した。
「おがる」‐。故郷・青森県八戸市の方言で「成長する」という意味だ。「準決勝まで調子が悪かった両足タックルを決勝で出せた。ハイクラッチも1回戦で出せた。やってきたタックルを少しずつ出せた」。20代後半になっても進化が止まることはない。
スタンドからは48キロ級でアテネ、北京と連続銀メダルに輝いた姉・千春さんが声援。妹は「千春がタイミング良く『馨、頑張れ!』って言ってくれたので、気持ちが楽になった。天の声のようだった」と姉に感謝した。
「レスリングが大好き。休みながらやるかな」と現役続行を示唆。注目は16年リオデジャネイロ五輪での前人未到の4連覇挑戦。無敵の女王は「あっという間にリオだと思う。まだ分からないけど、そうですね、頑張れれば」と、小原先輩に続く三十路(みそじ)の挑戦に意欲をのぞかせた。