ノリさん、ありがとう!有終銀で勇退
「ロンドン五輪・サッカー女子・決勝、日本1-2米国」(9日、ウェンブリー競技場)
女子日本代表(なでしこジャパン)の佐々木則夫監督(54)が、準優勝に終わった9日の米国戦後に、9月末の契約満了を持って勇退する考えを示した。日本にW杯優勝など多くの栄光をもたらした名将に対しては、日本協会も女子の各年代に対する統括、強化を担当するポストを用意する見込み。また、後任についてはU‐20女子代表監督である吉田弘氏(54)の就任が有力だ。
最後まで、ノリさんらしかった。米国戦の前半26分、MF宮間のFKがペナルティーエリア内の相手MFヒースの腕に当たり、PK獲得と思われる場面について会見で問われると、佐々木監督は「『あれっ』て思いましたが、素直に主審をリスペクトすることが我々の使命ですから」と、柔和な表情を崩さず切り返した。
終了後にはピッチ上で円陣を組み「胸を張って銀メダルを掲げて帰ろう」と語り、一人ひとりにこれまでの総括と感謝の言葉を述べる解散式。その後はMF沢、FW丸山らから「ノリさん、ありがとう」という言葉と共に、銀メダルを首にかけてもらった。まさに、ファミリーという言葉がぴったりだった。
「集大成」と語っていたロンドン五輪。9月末で契約が切れることもあり、その後について「なでしこを率いていきたい気持ちもあるが、それは一方的なもの。僕が率いることでダラダラする状況になるかもしれない。なでしこをさらに上に導くには、資質の違った方も良いと思う」と勇退を示唆した。
ドイツW杯優勝、五輪銀メダルなどの功績を挙げた指揮官に対して、協会幹部も「何らかの形で残って欲しい」と語っており、強化・育成や普及など女子部門に携わるポストを用意する考えだ。さらには佐々木監督にとっての古巣・J1大宮も、アドバイザーなどの形で迎え入れる意向を持つなど、引く手あまたな状況だ。
なでしこジャパンは年内の代表活動はない見込みで、来年・韓国で開催の東アジア選手権が新生なでしこの旗揚げとなる予定。佐々木監督の後任については、U‐20女子代表の吉田監督が筆頭候補で、同代表のW杯終了を待って本格選考に入る見通しだ。
13年には国内で親善試合も計画するなど、女子の長期的な強化に向けて協会も動いており「将来的には、代表を女性の指導者が率いるのも良いね」と大仁会長が語るなど発展性を見せている。「この先、今回の銀をより良い色にするために、精進しないとね」。女子サッカー界を進化させた名将が、銀メダルを置きみやげになでしこを去る。