沙保里、スランプ乗り越え3連覇だ!

 「ロンドン五輪・レスリング女子55キロ級」(9日、エクセル)

 女子フリースタイル55キロ級の吉田沙保里(29)=ALSOK=が、同階級の大会3連覇を遂げた。女子では前日優勝した同僚の63キロ級・伊調馨、男子では柔道男子60キロ級の野村忠宏に次ぎ3人目の偉業。レスリングでは「霊長類最強」と称されたアレキサンダー・カレリン(ロシア)が記録した五輪と世界選手権を合わせた12連覇に並んだ。吉田は休む暇なく、新記録のV13がかかる9月の世界選手権(カナダ)に向け、早くも「挑戦したい」と電撃出陣を表明した。

 五輪3連覇を決めた瞬間、吉田は全身で喜びを爆発させた。体操選手ばりのバック宙を連発し、駆け寄った栄和人監督(52)をマットに投げ倒すと、父・吉田栄勝コーチ(60)を肩車して日の丸を観客席にアピール。まさに『沙保里のビッグショー』だった。

 「幸せです。その一言。レスリングをやってきてよかった」。負けられない恐怖とプレッシャーが大きかったからこそ、言葉に実感を込めた。「試合前まで目をつぶると相手選手の顔が出てきて眠れなかった」。実はスランプに陥っていた。

 昨年9月の世界選手権決勝でバービークに大苦戦。「負ける恐怖」を味わった。そこで間合いを詰める近距離戦法に変えたが、試行錯誤のまま不振に陥った。12月の全日本選手権では当時高校生の村田夏南子に1ピリオドを奪われた。今年5月に東京で開催された女子W杯では19歳のジョロボワにまさかの敗戦。連勝記録が58で止まった。不安が現実となり、栄監督は「沙保里はトンネルを抜けきらない感じだった。正直、五輪は難しいと思った」と、V逸覚悟でロンドンに臨んだ。

 それでも立て直した。「眠れなくても、試合になればやるしかない。最高の舞台。無心で暴れようと」。敗戦を教訓に「負けないレスリング」に徹した。「周囲は『もっと攻めろ』と思うかもしれないけど、『勝ってなんぼ』ですからね」。言葉通り、序盤は確実にポイントを重ねて連勝。準決勝では因縁のジョロボワに何もさせずに完勝。決勝では一転、パワー全開の強烈タックルで宿敵バービークを粉砕した。

リオで4連覇も!? カレリンと肩を並べた女王は『霊長類最強の女』を襲名。9月の世界選手権で13連覇達成なら、カレリン超えだ。出場は未定ながら「出るかどうかは半々。いや、超えたい。負けてもいいから挑戦したい」と前向き。さらに4年後の五輪に向けても「このまま勝てるなら、やってやろうじゃないの!という気にはなってます」。リオデジャネイロでの4連覇挑戦にも含みを持たせた。

 10月で三十路(みそじ)を迎えるが、進化は止まらない。トンネルから抜けてたどり着いたロンドンは、まだ通過駅でしかなかった。

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