内村、男子団体 笑顔満点金メダル!予選4位&出遅れ6位から大逆転

 「リオ五輪・体操男子団体・決勝」(8日、リオ五輪アリーナ)

 陽はまた昇った!男子の団体決勝が行われ、内村航平(27)、加藤凌平(22)、田中佑典(26)、山室光史(27)=ともにコナミスポーツ、白井健三(19)=日体大=で挑んだ日本は、合計274・094点で04年アテネ五輪の“栄光の架け橋”以来12年ぶりとなる金メダルを獲得した。予選4位の日本は、最初のあん馬で山室が落下するミス。6位と出遅れたが、その後は圧巻の演技を続け逆転した。エースの内村にとっては3度目の挑戦で、悲願の団体金メダルとなった。

 内村を中心に5人一緒に拳を突き上げた歓喜の瞬間は、あの漫画の1ページのようだった。12年前のような非の打ちどころのない完璧な演技ではなかったかもしれない。それでも、美しく、力強く、見る者を熱くさせる情熱を込めた魂の演技が、再び陽を昇らせた。

 最終種目の床。エースの内村が、勝利を決めにいく最後の跳躍に入る。ここまですべての種目をこなしてきた両足は悲鳴を上げていた。「足がもつれそうになった」。それでも美しい放物線は崩れない。3回ひねりの着地。弾む床を何とか押さえ込み止めてみせると、大きく息をついた。疲労困憊(こんぱい)のエースを4人が笑顔で迎える。頼れる仲間たちに囲まれ、内村はホッとしたような笑みを浮かべた。

 今年テーマに掲げたのは「平常心」。そこには4年前の反省が込められていた。「1人で突っ走り過ぎていた」-。12年のロンドン五輪。北京五輪以降、世界選手権個人総合3連覇を果たし、絶対王者として臨む2度目の夢舞台を前に、内村は気負っていた。「五輪を特別視し過ぎていた」と振り返る。

 代表合宿でもエースは浮いた。激しい代表選考を終えたばかりの1回目の合宿から、6種目を全て通す練習を何度もこなした。疲れの残っていた周囲は困惑。「もっとノビノビやればよかったのに“こんなんじゃ駄目”って思ってた。正直、温度差を感じてた」。“絶対王者”の暴走。一体感を欠いたチームは、五輪本番で予選でのミスから立て直すことができず崩壊した。

 今年、年明けから内村の表情はどこまでも穏やかだった。ロンドン後に千穂夫人と結婚。2児の父となった。オフの日は体を休めつつ2人の娘と遊ぶ。そこには四六時中体操のことを考えていた男の姿はない。「子供や奥さんに家の中まで“本気のやつがいる”って思われたくないから」

 練習でも姿勢だけでなく、言葉でしっかりと思いを伝えるようになった。14年世界選手権での中国との0・1点差負けなど3年間ほぼ代表で行動をともにしてきた仲間たちも、内村と団体への思いを共有。いつしか「航平さんに金メダルを!」が合言葉になった。今回もまた予選ではミスが出た。それでも内村が「プロの集団になった」と語るチームは、逆境をあっさりとはね返す力があった。

 ずっと“アテネ超え”の感動を目標にしてきた。ミスが出た内容に「アテネは超えられなかった」と素直に認めた。ただ、体操ニッポンの新たな一歩を刻んだ自負はある。「僕たちは新しい歴史を作ることができた」-。

 こだわり続けてきた団体金メダルへの思いの原点はアテネ五輪の記憶だけでなく、愛読書の体操漫画「ガンバ!Fly high」にもあった。主人公の藤巻駿が仲間たちと五輪で日本を金メダルに導く物語。「駿みたいになりたい」と話していた内村が最高の仲間たちとともに、珠玉のストーリーを紡いだ。

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