大野、日本柔道で金メダル「相手に敬意」表情変えず深々一礼
「リオ五輪・柔道男子73キロ級」(8日、カリオカアリーナ)
男子73キロ級で13、15年世界選手権王者の大野将平(24)=旭化成=が、決勝でルスタム・オルジョイ(アゼルバイジャン)に小内刈りで一本勝ちし、日本柔道の今大会金メダル第1号となった。現在の階級制度になった00年シドニー大会以降、日本選手の同階級制覇は史上初で、日本男子としても金メダルは2大会ぶり。女子57キロ級の松本薫(28)=ベネシード=は準決勝で敗れて2連覇は逃したが、3位決定戦で連珍羚(台湾)に優勢勝ちし、銅メダルを手にした。
歓喜の瞬間も表情は変わらない。技ありを奪った後も攻め続け、小内刈りで一本を奪い、金メダルの勝ち名乗りを上げた大野は、いつも通り深々と一礼。「相手もいるので敬意を表そうと。日本の心を見せる場でもあるので、気持ちを抑えた」。強さだけでなく、日本柔道の「自他共栄」の精神も体現して見せた。
金メダルが本命視される重圧をはねのけての圧勝劇だ。「達成感より安心感の方が強い。『金メダルを獲って当たり前』と言われていたが、それを当たり前にできた」と胸をなで下ろした。井上康生監督は「あえてそれを言い続けたが、エネルギーにしてくれると信じていた」と、井上ジャパン金1号のエースに目を細めた。
心技体すべてで相手を圧倒した。釣り手、引き手をしっかり持って一本を奪いに行く日本の柔道スタイルで、力が強い海外勢をねじ伏せた。「中量級でも強くて美しい日本の柔道ができると証明したかったし、柔道界のシンボルになれるように精進したい」と胸を張った。
負けん気だけでやってきた。7歳で柔道を開始。最初のライバルは2歳上の兄・哲也さん。背中を追って中学から講道学舎に入門したが、同学年の中でも小柄で「10人中9番手くらい」と期待されていなかった。それでも負けた相手は勝つまで忘れない執念と、泣きながら厳しい練習に必死に食らいつく根性で徐々に頭角を現した。
転期は大学4年の2013年。世界選手権を初制覇したが、直後に天理大での暴力問題が発覚。謹慎を余儀なくされ、柔道を辞める選択肢も考えたが、もう一度真剣に柔道に向き合う道を選んだ。
挫折を経て成長し、金メダルをつかんだが、まだ途上。20年東京五輪に向けて「もっと金メダリストにふさわしい人間に成長しないといけない。最強かつ最高の選手。子供たちに憧れられるように」と、日本柔道を背負って立つ。