【朝原宣治の目】桐生は“揺るぎない自信”を持てなかった

 「リオ五輪・陸上男子100m・予選」(13日、五輪スタジアム)

 10秒01のタイムを持つ桐生祥秀(東洋大)=は、10秒23で予選7組4位に終わり、日本勢で唯一予選落ちとなった。

 ◇   ◇

 桐生君は自分の走りを見失ってしまった。ボルトと同組で観客が騒々しいことは想定内。むしろ、スタートラインに立った時点で揺るぎない自信が持てていなかったことが大きい。スタートから走りが硬く、どこか制限がかかっているような感じで、10秒01を出した時のノビノビとした走りとは違っていた。

 若くして一気に注目され、知らないうちに大きなものを背負っていた。五輪本番までに一度でも気持ちいいレースができていればよかったのだが、国内だけでなく海外でもすっきりしないレースが続いた。心にモヤッとした不安が残ったままだったのだろう。

 初五輪のケンブリッジ君も期待と不安が半々だと思うが、日本選手権で2人を破って五輪に乗り込んだことが大きい。後半にしっかり自分の走りができると信じてレースに臨み、そのとおりにできた。山県君にも揺るぎないものがある。自分のスタイルを確立し、普通にやれば大丈夫という自信を持っている。

 準決勝では着順での決勝進出は厳しいだろう。どうにかタイムで食い込みたいが、おそらく9秒台が必要だ。ボルトやガトリンなど実力差のある相手と競い合うより、自分のベストの走りを貫いてほしい。(08年北京五輪男子400メートルリレー銅メダリスト、「NOBY T&F CLUB」主宰・朝原宣治)

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