白井 世界驚かせた跳馬“シライ2”初成功
「リオ五輪・体操男子種目別跳馬・決勝」(15日、リオ五輪アリーナ)
種目別決勝が行われ、男子跳馬で白井健三(19)=日体大=が新技の「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を決めて銅メダルを獲得した。団体総合の金に続いて2つ目のメダル。日本人の跳馬でのメダルは1984年ロサンゼルス五輪の具志堅幸司、森末慎二の銀メダル以来32年ぶり。成功した新技は国際体操連盟から認定されれば「シライ2」と命名される見通しだ。
もう迷いはなかった。攻める!初めての五輪で、最後の演技。だからもう、悔いは残さない。床運動での失敗から一夜。本来の挑戦心を取り戻した白井が、リオの舞台に大きな足跡を残した。
1本目でまだ国際大会で誰も成功していない新技の「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」に挑戦。思い切りのいい跳躍からしっかりとひねりきると、着地もライン内に収めた。世界の猛者たちに交じり、堂々の銅メダルを獲得。「とにかくビックリ。床で負けた分、それ以上のものを取り返せた気分」と“一発勝負”での成功に、破顔一笑した。
金メダル大本命とみられていた前日の床は消極的となり、らしくないミスを連発、4位に終わった。それだけに初めて手にした個人のメダルに「うれしさは断然、団体の方があるけど、すごく大きなものを乗り越えてのメダル。違ったうれしさがある」と、重みを確かめた。
すでに床で3つ、跳馬で1つ、自身の名がつく技を持っており、今回の新技は跳馬の「シライ2」となることが確実。19歳で5つの技を持つ“ひねり王子”は、内村航平から「(20年)東京までにシライ10までいける」と、ハッパを掛けられている。白井自身は「名前がつくことに興味はない」と笑う。ただ、純粋に成長を求めていく過程で常に新たな技に取り組んできた。
体操などの動作解析を専門とする金沢大の山田哲准教授は、さらなる進化の可能性を指摘する。床で現在、男子の最高難度のH難度となっているシライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)。ひねりの技術に長ける白井について、これを「4回ひねることも不可能じゃない」と分析した。
仮にひねりが半回増すことで難度が上がるとすれば、さらに1回ひねる同技は、男女通じて世界最高難度の“J”難度となる可能性がある。20年東京五輪、エースとして成長した“ひねり王子”が、JAPANの頭文字、“J”難度の究極技で金メダルに導く。そんな漫画のようなストーリーも白井なら決して不可能ではない。
初めての夢舞台での戦いを終え「すごくやりきった感がある」と振り返った。24日に20歳の誕生日を迎えるため、これが10代最後の演技だった。「後悔はまったくない。素敵な10代だった。20歳になっても勢いそのままにいきたい!」。無限の未来へ、元気に白井らしく、所信表明した。