乾&三井 井村監督の誕生日に銅メダルプレゼント
「リオ五輪・シンクロナイズドスイミング・デュエット・フリールーティン」(16日、マリア・レンク水泳センター)
デュエット決勝のフリールーティン(FR)が行われ、乾友紀子(25)=井村シンクロク、三井梨紗子(22)=東京シンクロク=組が3位の94・9333点をマークし、4位だったテクニカルルーティン(TR)との合計188・0547点で銅メダルを獲得した。日本勢は2大会ぶりの表彰台。指導する井村雅代監督の66歳の誕生日に、メダルをもたらした。
お家芸復活は成った。11番手で演技したウクライナの得点が表示される。あと1組を残し、日本の2大会ぶりの銅メダルが事実上確定した。井村監督は両手を広げて万歳。乾はその場に膝から崩れ落ち、三井は現実を受け止め切れないようだった。3人は抱き合い歓喜を分かち合った。 乾は「このためにシンクロをやってきた。思いがかなって本当にうれしい」と言葉に実感を込め、三井も「(メダルは)すごく重くて大きくて、自分に掛かっているのが夢みたい」と目を潤ませた。
この日は井村監督の66歳の誕生日。1年前から「最高のプレゼントをしたい」と誓い合った言葉を実現した。日本と中国に計15個の五輪メダルをもたらした名伯楽も「忘れられない誕生日になった」と満面の笑みを浮かべた。
銅メダル争いはTR4位の日本と3位のウクライナに絞られていた。15日のTRで0・0144点のリードを許していたが、9番手で「風神雷神」をテーマに演技を終えると、合計で0・9189点上回り逆転。芸術性こそ差はつかなかったが、完遂度や技の難度で大きく引き離した。
小学1年でシンクロを始めた乾は、小学6年で「井村シンクロクラブ」に入った。09年に代表入りしたが、井村監督は04年に退任。ロンドン五輪のデュエットで5位に終わり、連続メダルを途切れさせた後は「シンクロをやっていく目標が分からなくなった」と言う。再びシンクロに向かわせてくれたのが14年に復帰した井村監督の存在だった。
その春、ウエートトレーニングで音を上げた乾に対して「日本が弱くなったのはあんたのせいや!!」と容赦ない言葉を投げ掛けた。乾はトイレに閉じこもり、仲間に励まされて出てきたのは半日後。「やっぱり私がやるしかないんです」と頭を下げ、メダルへの決意を固めた。
「私によく付いてきた。きょうの演技は90~95点くらい。まだ文句はあるけど」と井村監督は笑った。首元にはネックレス。試合前に乾らから贈られたものだ。表彰式の後“シンクロの母”の首には、銅メダルというもう一つの誕生日プレゼントが掛けられた。