競歩・荒井が正真正銘の銅 接触巡りゴールからドタバタ3時間半
「リオ五輪・陸上男子50キロ競歩」(19日、ポンタル周回コース)
男子50キロ競歩が行われ、3時間41分24秒の3着でゴールした荒井広宙(28)=自衛隊体育学校=は、ゴール直前に争いを繰り広げていたエバン・ダンフィー(カナダ)を妨害したとして一度失格となったが、日本チームの抗議で判定が覆り、日本の五輪競歩史上初となる銅メダルを獲得した。異例のドタバタ劇の末に、陸上では今大会日本のメダル1号となった。昨年の世界選手権銅メダルの谷井孝行(33)=自衛隊体育学校=は14位、森岡紘一朗(31)=富士通=は27位だった。
荒井が3番目にゴールしてから約3時間半後、ジェットコースターのような目まぐるしい展開を見せたドタバタ劇を経て、ようやく日本競歩界初のメダルが決まった。2度目のメダリストインタビュー。再び日の丸をまとい、姿を見せた荒井はホッとしたように笑いながら言った。
「お騒がせしました。申し訳ないです」
ゴールまで残り800メートル地点で“事件”は起きた。3位だった荒井を、追い上げてきたカナダのダンフィーが抜いた。「ここで仕掛けなきゃ終わりだ」と意地のスパートをかけた荒井が内側から抜きかえそうとしたときに、腕と肩付近がダンフィーに接触。その後、ダンフィーは力なくよろけ、荒井はそのまま抜けだし3位でフィニッシュした。
死力を尽くしたゴールだったが、ここからがドラマの始まりだった。カナダ陸連は接触は荒井の反則だと主張し、抗議文を提出。審判委員長が異議を認めて一時はダンフィーが3位となり、荒井は失格が確定した。
ただ、ここから日本陸連の対応も迅速だった。麻場監督は「明らかに不可抗力だし、向こうの肘が先に当たっている。納得できない」と、すぐさま国際陸連に上訴。国内からレース映像を取り寄せて問題点を洗い出し、文書にして提出した。ダンフィーの肘が先に荒井に接触していること、ダンフィーが接触に関係ない場面でよろけていることなどを強調。国際陸連理事5人による上訴審議の結果、日本の訴えが認められ、ようやく荒井の銅メダルが確定した。
日本関係者へメールで吉報が届けられたのは公式発表より早い午後3時14分で、レース終了から約3時間半。スタートから計7時間の“激闘”に終止符が打たれた。
荒井にとっては15年にがんで亡くなった母・繁美さんに捧げるメダル。思わぬ形での最終決定となったが、リオの晴天の向こうにいる母に最高の報告ができる。「帰って早く仏壇にメダルを掛けてあげたい」。おそらく、はらはらドキドキで見守ってくれた亡き母を思い、ようやく柔らかな笑みが浮かんだ。