羽生伝説は続く…次なる夢は「4回転アクセル」 実現の可能性は?
「平昌五輪・フィギュアスケート男子・フリー」(17日、江陵アイスアリーナ)
ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(23)=ANA=が206・17点をマークし、合計317・85点で男子では1948年サンモリッツ、52年オスロ大会のリチャード・バットン(米国)以来、66年ぶりの2連覇を成し遂げた。今大会日本選手団第1号の金メダルは、冬季五輪1000個目の金メダル。右足のケガからの復帰戦ながら最後まで意地の演技で耐え続け、日本選手として冬季五輪の個人種目で初めて連続で頂点に立った。
勝負のフリーを迎える朝、羽生は決断した。4回転は2種類-。「なによりも勝ちたかった。勝たないと意味はないと自分の中で思っていた。この試合は特に。本当に大事に大事に結果を取りにいった」。3種類目のループを回避し、勝負に徹する覚悟を固めた。
振り返れば羽生は、ソチ五輪以降多くのタイトルを獲得しても、挑戦をやめることはなかった。むしろ誰よりも自分自身に期待を懸け、自身を追い込み、自らを頂点へと引き上げようとしてきた。15年に330点といういまだ破られていない世界歴代最高得点を記録しても、4回転ループやルッツへ挑戦した。
打倒羽生を達成するにはより難しい4回転を跳ぶしかないと、金博洋(中国)が4回転ルッツを跳んだのを皮切りに、宇野やネーサン・チェン(米国)ら若手選手は次々と基礎点の高い4回転を跳んだ。開かれた異次元の戦いは、元来羽生が求めてきた形だ。「みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して押し上げてきた。これからのスケートが楽しみ」と羽生。自身へ向けても「挑戦しないと僕らしい演技はできない」と語った。
そんな羽生がこの日跳んだのは、結局2種類のみだが「今日のベストを尽くした」。歩んできたこの道のりは、正しかったと確信している。「それ(挑戦)があったからこそ選択肢があった。ルッツ、ループに挑戦していなかったら、この構成が落としたといえない。落としたという自信にならない。やっぱり一つとして無駄なことはなかった」。全ての経験が、連覇という偉業を引き寄せた。
3連覇の懸かる4年後の北京五輪については「今は特に考えていない」と濁したが「もうちょっと滑ると思うけど、みんな一緒に滑りながら、また色々考えていけたらと思う」と現役続行を表明した。昨年10月には「将来的には4回転アクセルをやりたい」とも語っている。これはかねて羽生が描き続けてきた夢だ。
バンクーバー五輪代表監督で千葉大の吉岡伸彦教授は「理論上は5回転まで可能」としている。羽生ら多くの4回転ジャンパーは、1秒間に5回転できる回転速度と、約0・8秒の滞空時間で4回転を回っている。回転速度をもう少し速めるか、滞空時間を1秒まで延ばせれば、計算の上は可能になるのだ。
いまだ成功者のいない4回転アクセル。トリプルアクセル習得など、羽生の基礎を築いた都築章一郎コーチは「試合に入れるまで持って行けるかというのが頭の中に働くと思う。挑戦よりも結果にエネルギーを使わないといけない立場の人間だから」とおもんぱかる。羽生の野望は果たして-。挑戦を生きがいとする羽生が繰り出す次の“一手”が待たれる。