宇野快挙も“マイペース”「五輪の銀に特別な意味ない」「グータラ生活…楽しかった」
「平昌五輪・フィギュアスケート男子・フリー」(17日、江陵アイスアリーナ)
昨季の世界選手権2位でSP3位につけ、最後に演技した初出場の宇野昌磨(20)=トヨタ自動車=は銀メダルを獲得した。フィギュアで初めて複数の日本選手が同時に表彰台に立った。初出場の田中刑事(23)=倉敷芸術科学大大学院=は合計244・83点で18位だった。SP2位の元世界王者ハビエル・フェルナンデス(スペイン)が合計305・24点で銅メダル。金博洋(中国)が297・77点で4位となった。
世界中の視線が集まる銀盤の頂上決戦。日本が誇る次代のエースは、“五輪の魔物”に出会うことも、のみ込まれることもなく、いつも通り舞い、あっさりと銀メダルをかっさらっていった。
「五輪の銀メダルに特別な意味はない。自分の演技ができて、結果として2位になれた。特別な実感はないです」。競技終了後、羽生が泣き、フェルナンデスも泣いていた。抱き合いの輪に加わったが「英語で話していて分からなかった。泣いていたけど、(羽生とフェルナンデスが)同じクラブだからかな、ハビエル選手が現役が長くないからかなと思っていた。羽生選手にとっては五輪は特別なんだなって思った」。一人だけ別次元にいるかのように達観していた。
重圧の掛かる最終滑走。「正直、嫌でした。全然集中はしてなかった。他の選手の演技を見て、点を見て、どんな演技をして、どんな点を出せば、どんな順位になるかなと思ってた」。今まで一度も勝ったことがなく、ずっと「勝ちたい」と話していた羽生が首位となり「勝ちたいという気持ちはあった。完ぺきに演技すれば1位かな」と意気込んでいたが、冒頭の4回転ループで転倒。「笑えてきました。あとは自分のことだけ考えようと思った」と、その後は一気に力が抜けた。「トゥーランドット」の荘厳な曲調にのり、華麗な滑りで観客を魅了。フィニッシュ後は突き上げた右手で、そのままガッツポーズした。
ただ、激しい感情を表に出したのはここだけ。銀メダルが決まった瞬間、5歳から指導を受ける樋口美穂子コーチが泣きながら抱きついてきたが、無反応。樋口コーチも思わず「私は泣いてたんですけど。昌磨はキョトンとしてましたね。全然反応がなかった」と苦笑いだった。
「日本にいる時よりもゲームができたので満足。演技も生活も。グータラ生活ができて楽しかったです」と、笑った宇野。銀メダルの輝き以上に、強烈な大物感を刻み込み、日本の次代のエースは初の夢舞台を終えた。