高木菜那 “美帆の姉”の葛藤超えて…妹とつかんだ金メダル

 「平昌五輪・スピードスケート女子団体追い抜き・決勝」(21日、江陵オーバル)

 団体追い抜きで高木美帆(23)=日体大助手、高木菜那(25)=日本電産サンキョー、佐藤綾乃(21)=高崎健康福祉大、菊池彩花(30)=富士急=の日本女子は前回覇者オランダとの決勝を2分53秒89の五輪新記録で制して金メダルを獲得した。今大会の日本のメダルは11個となり、1998年長野五輪を上回り冬季大会最多となった。

 妹と一緒にかけた金メダルは格別だった。高木菜那は「気持ちを一つにしてオリンピックレコードで優勝することができた」と感慨にふけった。「金メダルを取れたねとみんなで喜びを分かち合った。この4人だけでなく、最後まで転ばずにゴールできたのはナショナルチームのおかげ」と仲間への感謝の気持ちを口にした。

 「美帆の姉」という枕ことばに惑わされ続け、憧れ、対抗心を抱き続けた競技人生だ。スケート選手として最初の屈辱を味わったのはまだ中学生の頃。中3の菜那は2年下の妹に負けた。「負けてる自分を認めたくない気持ちが強かった」と菜那。妹が気になって仕方なかった。

 同競技最年少でバンクーバー五輪出場を決めると、わき上がるのは嫉妬心。「超むかついてました。ずるくない?みたいな。でも、いいなーが一番。まだ高校生だったので、悔しさやうらやましい気持ちがすごい出ていた」。負けを認めるようで悔しくて、両親にも兄にもその思いは打ち明けられなかった。心は複雑に絡まったまま、妹の応援でバンクーバーへと向かった。

 「心から応援できているかといったら、そうじゃなかった」と菜那は振り返るが、そのバンクーバーが世界を変えた。妹は1000メートルで35人中最下位。自分のスケートの全てだった美帆は、世界ではちっぽけだった。「世界にはこんなにたくさん速い人がいる。私もここで戦いたい」。その衝撃は菜那を駆り立てた。

 高校卒業と同時に、スケートの名門・日本電産サンキョーに入社。バンクーバー五輪500メートル銀の長島圭一郎氏や加藤条治らトップ選手と練習をともにし、意識は徐々に変わった。世界を目指す自覚が、菜那をソチ五輪へと導いた。妹は落選。しかし「妹に勝ったからどうこうという気持ちはなくなっていた。今も妹は一つのモチベーションだけど、目標はそこじゃない」。いつの間にかそう言えるようになっていた。

 そして初めて2人でつかんだ五輪。最強のパートナーとして、2人は足取りをそろえ、五輪のリンクを駆け抜けた。

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