宮原4位発進!「グッ、グーーー、グッバッ!」と跳んで回転不足克服
「平昌五輪・フィギュアスケート女子・SP」(21日、江陵アイスアリーナ)
女子ショートプログラム(SP)が行われ、全日本選手権4連覇中の女王、宮原知子(19)=関大=が自己ベストを1・33点更新する会心の演技で75・94点をマークし、4位発進した。3位のオズモンド(カナダ)とは2・93点差。バンクーバー五輪銀の浅田真央以来2大会ぶりとなる日本女子のメダル獲得へ、絶好の位置につけた。坂本花織(17)=シスメックス=も自己ベストを更新する演技を見せ、73・18点で5位。首位は世界歴代最高得点を更新したザギトワ(OAR)で82・92点だった。
落ち着いた表情で達成感をかみしめた。宮原が、これぞ“ミス・パーフェクト”という演技を披露。自己ベストを更新する会心の舞に「大きなミスなく終われた。やっと75点が出せた」と喜んだ。
演技冒頭、課題としていた3回転ルッツ-3回転トーループの連続ジャンプが、やっとはまった。1月の四大陸選手権から回転不足を連発。団体戦でも克服できず、無念さを口にしていた宮原。ルッツの着氷時に長く踏ん張ることに意識を置いて、練習を重ねてきた。
「グッ、グーーー、グッ、バッ!」。宮原の頭の中では、こんな擬音が巡るという。一つ目の「グッ」で右トーをついて跳び上がり「グーーー」っと右足で着地。もう一度「グッ」で今度は左トーをついて跳び「バッ!」と降りる。「グーーー」を長く取ることで、変に力まず跳び上がれるという。韓国入り後、この間(ま)を長くするための努力を地道に積み重ねた。「6分間練習がよかったので、そのイメージでグッ!て跳びました。トーループはバッ!って降りられた」。大一番に間に合わせた。
もともと宮原は、世界の舞台に羽ばたくような片りんは見当たらない、おとなしい女の子だった。小学2年から指導する浜田美栄コーチ(58)は「知子はどんくさいし、(大成するとは)全然思わなかった。才能という点では、もっといい子はいっぱいいた」と振り返る。「運動神経は悪い」と宮原もそれを自認。テニスをすればラケットの面を水平に振ったし、バレーのサーブも空振りした。
しかし根性だけは人一倍あった。宮原にとってできないことは当たり前。「今の下手だったね」とコーチから言われても、めげずに愚直にトライし続けた。「これだけ同じことをやり続けられるんだ」とコーチ。習得するまで数年かかったスピンもあった。左股関節の疲労骨折からの復帰を目指すリハビリ中は、1日1000回腹筋した。
そのたゆまぬ努力が実り、つかんだ4位発進。3位オズモンドよりもフリーの今季ベストは宮原が上だ。2・93点差だけに逆転は十分可能。真摯(しんし)に戦い続けることの意味を、2大会ぶりのメダルで証明する。