宮原知子4位「やり切った」 “愚直のエース”がメダル級のスマイル
「平昌五輪・フィギュアスケート女子・FS」(23日、江陵アイスアリーナ)
ショートプログラム(SP)4位の宮原知子(19)=関大=が自己ベストを更新する146・44点をマークし、合計222・38点で4位となった。会心の演技にガッツポーズも飛び出したが、3位のケイトリン・オズモンド(カナダ)がさらに得点を伸ばし、バンクーバー五輪以来2大会ぶりの悲願のメダル獲得にはあと一歩及ばなかった。SP5位の坂本花織(17)=シスメックス=は136・53点の209・71点とし、6位。SP首位のアリーナ・ザギトワ(OAR)が合計239・57点で逃げ切り金メダルに輝いた。
19年の生涯で一番感情を爆発させた瞬間だった。回転不足が課題だった3回転ルッツ-3回転トーループの連続ジャンプもしっかりクリア。スピンもステップも、全てで最高評価のレベル4を獲得し、完璧な演技を遂げた宮原は、両手を突き上げ、こん身のガッツポーズを繰り出した。
両手を突き上げたその瞬間「ここまで来たらメダルを取りたい」。今まで口にしなかったメダルという目標を本気で意識し、心の底で唱えた。その願いこそかなわなかったが「やれることはやり切った」。すがすがしい晴れやかな笑顔を五輪の銀盤に刻み込んだ。
真面目で、静かで、おとなしい女の子。それが宮原知子だった。「めったに声を聞かなかった」と、小学2年から指導する浜田美栄コーチ(58)。シャイで、人見知りもした。ほんの1年ほど前までは、ガッツポーズすら練習するほど、感情を表に出すのが苦手だった。
しかし氷の上でだけは別人のようにキラキラ瞳を輝かせ、堂々と自身を表現した。運動は苦手だが、スケートが大好き。うまくできなくても、体力的にしんどくても、辞めようと思ったことは「一度もない」という。
小学校の調べ学習ではスケートのジャンプの見分け方についてまとめ、高校の卒業研究でも先輩スケーターにインタビューをして「五輪に魔物はいるのか」というテーマで論文を書き上げた。勉強も、学校生活もおろそかにすることはなかったが、生活の中心はいつもスケートだった。何事もひたむきにコツコツと。そうして日々、前進し続けてきた。
昨季終盤から左股関節疲労骨折などのケガもあり、この1年ほどは苦悩の連続だった。それでも諦めずに、前だけを見て努力を続ければ花は開くのだと、夢の舞台で証明してみせた。「五輪は、やってきたことを信じて思いっきりいけば楽しめる試合だった」。気になっていた魔物についても「いなかったです」と笑った。
「みんなすごくいい演技だった。勝つにはもう一歩足りない。また五輪に戻ってきて、今度こそメダルを取りたい」。もう一回り大きくなって、必ずやまた五輪の舞台へと舞い戻る。その決意を胸に、愚直な日本のエースは次なる夢へと踏み出した。