羽生結弦、5回転時代は「50年はないだろう」入れるなら「表現の一部に」
平昌五輪のフィギュアスケート男子で66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦が27日、5回転ジャンプの可能性について語った。日本外国特派員協会で「可能であれば挑戦したい」と語ったが、日本記者クラブでの別の会見では4回転半や5回転が主流になる時代が来ると思うかと尋ねられると「50年間はないだろうと予測します」とも語った。その真意はどこにあるのか。
外国特派員協会では5回転ジャンプについて「科学的な根拠で研究した結果、5回転までは人間の能力でできるということです」と可能性の上では「できる」とした。自身の取り組みとしても「小さいころからコーチに『おまえも5回転やれ』と言われてきたので挑戦したい気持ちはある」と、否定的ではなかったが、そうしたジャンプの技術的な部分のみがフィギュアスケートの本質ではない、という思いを日本記者クラブでの会見では語った。
今後、ジャンプの難易度ばかりが高くなるとジャンプ選手権のようになるのではないか、という危惧を含めた質問を受けた時のことだった。羽生はこれに「5回転が主流になったり、4回転半が今のトリプルアクセル(3回転半)のように主流になることは、まずこの50年間においてはないだろうと僕は予測します」と明言。その上で、「それが主流になってしまったら、おっしゃっていたように、ジャンプ選手権…それこそ今回、僕は平野歩夢選手とお話をさせていただいて、参考にさせていただいた部分があったんですけど、ハーフパイプみたくなってしまう」と競技性が変わってしまうだろうとの見方を示した。
ただ、フィギュア界全体としての潮流とは別に、もしも自分がプログラムに4回転半や5回転を入れる時期が来たらという仮定では「もし羽生結弦が4回転半、もしくは5回転に挑む、試合で絶対に入れると決めた場合は、それは確実に表現の一部にします。それは言えます」と言い切った。
実際、羽生は今回の平昌五輪SPの3回転アクセル、そしてフリー冒頭の4回転サルコー、4回転トーループは出来栄え点で最高評価のプラス3を得る、完璧な完成度のジャンプを見せた。技術がなければ余裕ある美しいジャンプはできず、構成点に含まれる、構成や要素のつなぎ、曲の理解といった項目の得点にも当然、影響してくる。
「僕のスタイルはそこですし、何より僕がフィギュアスケートをやっている理由はそういうところにほれ込んだからであって、そういった演技にほれ込んできたから、オリンピックでこの種目で金メダルを目指したいと思ったわけであって。難易度と芸術のバランスは、僕は本当はないんじゃないかなと。芸術は絶対的な技術力に基づいたものだと、僕は思っています」とジャンプに対しての哲学を明かした。