「記録より記憶」平野海祝9位も、衝撃7mエアで喝采 金メダルの兄歩夢にも刺激
「北京五輪・スノーボード男子ハーフパイプ・決勝」(11日、雲頂スノーパーク)
日本スノボ界初の金メダルに輝いた平野歩夢(23)の弟、平野海祝(かいしゅう、19)=日大=は、初の五輪で堂々の9位に入った。1本目のランでは一発目で7メートル近い高さのエア(空中技)を披露し、周囲の度肝を抜いた。順位以上のインパクトを残した19歳は「1番誰よりも飛んで、みんなが一目見て『すげー』という滑りができた。すごく納得できて、五輪を楽しめた」と胸を張った。
兄の背中を追って競技を始め、ついに五輪決勝の大舞台での競演を果たした海祝。4番目に滑走すると、最初のエアで回転もしないまま高々と舞い上がり、見ている者に恐怖すら与えるような大跳躍で衝撃を与えた。持ち味たっぷりのルーティンで、点数こそ75・50点と伸びなかったが、超大技「トリプルコーク1440」を成功させた兄に勝るとも劣らない喝采を浴びた。
日本代表の村上大輔コーチらにも「1番高く飛ぶ。記録よりも記憶に残す」と決勝前に予告していたといい、見事に有言実行。自身の順位についても「自分は何位かわかんないっすね(笑)。でも、自分がやりたい滑りはできた」と気にしていない様子で、「とりあえず兄ちゃんに金メダルを獲ってもらって良かったっすね」と兄の金メダルを自分のこと以上に喜んだ。
兄・歩夢は2本目で「トリプルコーク1440」を入れた構成で初めて滑りきったものの、まさかの2位にとどまったが、大トリの3本目で大逆転。コースの下で見ていたという海祝は感無量で泣きそうになったといい、「(展開が)危ない状況だったが、最後に勝負強さを見せてくれて、自分はめちゃくちゃ感動した。小さい頃から兄ちゃんの努力を見てきたので、やっぱ(金メダルを)獲るべきは兄ちゃんだなと思っていた」とうなずいた。
歩夢も、弟のビッグエアに少なからず刺激を受けた様子。「ずっと兄弟でこの大舞台を経験したいという気持ちを持っていた。兄弟で高め合いながら、海祝もいい滑りをしていたし、それで(自分も)プッシュされたんじゃないかな。気持ちは高まってたっすね、確実に」と振り返った。
初の夢舞台で、大きな手応えと刺激を得た海祝は「また4年後もここ(五輪)に立って、次は兄ちゃんと一緒にメダルを獲って盛り上げたい」と意欲。「兄弟で違ったスタイルでやるのも面白い。自分は自分なりのスタイルを貫いて、兄ちゃんは兄ちゃんなりのスタイルでやっていってほしい」と、最高のライバルを意識していた。
◆平野海祝(ひらの・かいしゅう)2002年10月14日、新潟県村上市出身。新潟・開志国際高から日大に進学。18年世界ジュニア選手権3位。20年冬季ユース五輪では銀メダルを獲得した。21年世界選手権出場。今年1月、世界のトップが集結する招待大会のXゲームで3位に入った。165センチ、60キロ。