渡部暁斗「銅」複合日本初3大会連続メダル ゴール前大激戦0秒6及ばず
「北京五輪・ノルディックスキー複合・ラージヒル」(15日、国家スキージャンプセンター・国家クロスカントリースキーセンター)
男子個人ラージヒルで渡部暁斗(33)=北野建設=が3位となり、複合日本勢で初めて3大会連続でメダルを獲得した。前半飛躍(ヒルサイズ=HS140メートル)は5位、トップと54秒差で出た後半距離(10キロ)は途中から先頭集団でレースを引っ張ったが、ゴール直前でグローバク、オフテブロのノルウェー勢に抜かれた。山本涼太(長野日野自動車)は12位。渡部善斗(北野建設)は25位、永井秀昭(岐阜日野自動車)は31位だった。
あと0・6秒-。ゴール直前まで先頭争いを繰り広げたが、渡部暁はまたも悲願の金メダルにはあと一歩届かなかった。不振のシーズンを乗り越えた喜びと、頂点を逃した悔しさが交差する。
「ベストを尽くして金メダルまで近いところまでは来られたが、最後(逃げ切る足が)残ってなかった」
まずは135メートルのジャンプで5位につけた。先頭と54秒差で距離をスタート。3・5キロ付近で先頭のリーベル(ノルウェー)を捉えると、先頭集団を形成。終盤は4人でのデッドヒートとなり、一時はトップに躍り出たが、最後の最後で2人に抜かれた。極限まで乳酸がたまった腕と足で最後の力を振り絞ったが、及ばなかった。
「正直、なんで(ラスト)数百メートルでもうちょっと頑張れなかったんだろうと思うが、走ってる時は精いっぱいだった。まあ、力不足ですかね」
ノーマルヒルで14年ソチ、18年平昌と2大会連続で銀メダル。それでも、まだ手にしていない金メダルを目指し、この4年間を過ごした。ただ、今季はW杯で表彰台に上がれず、今大会もノーマルヒルで7位。「金メダルを獲る獲ると言ってきたものの、今季全然いいレースができてなくて(自分を)信じ切れてなかった」と苦悩を明かした。
「正直きつかった。どんどん自分のパフォーマンスが出せないことが多くなってきて、メダルすら厳しいかもという気持ちもあった。ソチや平昌に向かうときのような自信もなく、今までで一番苦しい4年間だった」
それでも同種目で日本史上初となる3大会連続メダルの偉業。日本選手団の旗手として史上3人目となるメダリストにも輝き、大役を果たした。「求めた色(のメダル)ではなかったが、一つ形が残るものをまた残すことができて良かった」。苦難を乗り越えた33歳の輝きは、金色に勝るとも劣らない。
◆渡部暁斗(わたべ・あきと)1988年5月26日、長野県白馬村出身。白馬高時代に2006年トリノ五輪に出場し、個人スプリント19位。早大に進学し、2009年世界選手権の団体戦で日本勢14年ぶりの金メダルを獲得した。五輪は10年バンクーバー大会で個人ノーマルヒル21位、ラージヒル9位。14年ソチ大会は個人ノーマルヒル銀、ラージヒル6位。平昌大会は個人ノーマルヒル銀、ラージヒル5位。W杯では荻原健司と並ぶ日本選手最多19勝を誇る。173センチ、61キロ。