坂本花織が涙の銅 大舞台で自己ベスト!真央の銀以来12年ぶり快挙達成 ROCの牙城崩す
「北京五輪・フィギュアスケート女子・フリー」(17日、首都体育館)
25人による女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)3位の坂本花織(21)=シスメックス=が153・29点を出し、自己ベストの合計233・13点で銅メダルを獲得した。同種目の日本勢のメダルは2010年バンクーバー五輪2位の浅田真央以来。SP2位のシェルバコワがフリー2位の合計255・95点で金メダル。ドーピング騒動の渦中にいるSP1位のワリエワ(いずれもROC)はフリー5位で合計224・09点で4位だった。樋口新葉(明大)は5位、河辺愛菜(木下アカデミー)は23位。
リンクを包む異様なムードは「怖い」と言っていたロシアの底力を示していた。4種類5本の4回転を跳び、歴代2位のスコアをたたき出したトルソワの直後。それでも「自分のやるべきことをやる」。坂本の壮大で雄大な舞が、脅威を凌駕(りょうが)した。大舞台でフリー、合計とも自己ベストを更新。「ビックリしかない。個人でメダルがもらえるとは思わなかった」。日本女子で10年バンクーバー五輪「銀」の浅田真央以来のメダルを獲得した。
「しっかり神様が見ててくれたね」。恩師の中野園子コーチ(69)から声をかけられて目を潤ませた。貫いたのは自分のスケート。トリプルアクセルも4回転もない構成で、ルッツ、フリップ-トーループの連続3回転などすべてのジャンプで高い加点を得た。大きな山を描き、着氷後も長く伸びるダイナミックなジャンプは他に類を見ない。それを生むのは、滑走のスピードだ。
中野コーチは「普通はあんなに速く滑ってくると跳びにくいので、ある程度スピードを制御してしまう」と言う。加速しすぎると跳ぶ時にエッジの抑制は利かなくなる。しかし、坂本は「小さい時から思い切り走ってきて跳ぶか転ぶかどっちか。お尻パットはやりにくいと外してしまう子だった」と同コーチ。怖い物知らずで思い切りがいい。その才能を師弟で信じ抜いた。
17歳で五輪に初出場した平昌から4年。「燃え尽きてしまった」という五輪後の19年は全日本で6位に沈むなど不振に苦しんだ。世界では4回転やトリプルアクセルをロシア勢が次々と成功させていたが、自身は大技を習得できなかった。
「スケート人生、終わっちゃったかな」と折れた心を奮い立たせたのは、コロナ禍だった。リンク閉鎖の自粛生活に「自分だけじゃなくてみんなが滑れない。これは頑張れば逆転できる。頑張ったもん勝ちやと思った」。中学まで通ったスイミングスクールに頼んで泳ぎ、所属先の陸上部の練習にも参加した。
ワリエワを上回ったことで「暫定」がつくとされていた順位も確定。団体と2つめの銅メダルを手に、日本のエースは「悔しい思いもたくさんしてきた4年間の集大成。今まで頑張ってきたことが報われてすごくうれしい」と日の丸のようなまん丸な笑顔を咲かせた。