【黒岩敏幸の視点】高木美帆 鍛えたスプリント力の成果
「北京五輪・スピードスケート女子1000メートル」(17日、国家スピードスケート館)
女子1000メートルは高木美帆(27)=日体大職=が1分13秒19の五輪新記録で悲願の金メダルを獲得した。この種目では日本勢初、個人種目では自身初の金メダル。500メートル、1500メートル、団体追い抜きの銀に続く1大会4個のメダルは冬季の日本勢最多で、通算7個は夏季も含めた自身の日本女子最多を更新した。
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高木美のすごさをつくづく感じた。体はぼろぼろだったと思うが、気持ちのこもったレースだった。最初の200メートルを17秒60で滑り、入りが非常に良かった。スプリント能力を特に鍛えてきた今季の成果が出た。疲れている中で最後の1周28秒71のラップタイムもすごい。
今大会7レース目でお尻の筋肉に疲労がたまり、少し張っているようにみえた。だが、朝から今大会で集中力が一番高く、近寄りがたいオーラを発していた。狙っているレースでしっかり好結果を出せる。スケーターとして尊敬する。
オールラウンドに滑れる要因は、常に五輪でどうするかということを考えてきたからだ。代表選考会でも3000メートルの後にあえて1500メートルを滑ったりしてシミュレーションをしている。美帆が「捨てレース」をしたところを見たことがない。高い意識の中での試合、練習が、大舞台で力を発揮することにつながっているのだと感じる。
この金メダルで(団体追い抜きで転んだ)姉の菜那もほっとすると思う。小平はけがを言い訳にしたくなかったのだろう。本来のいい滑りではなかったが、まだまだ進化できると信じている。(アルベールビル五輪銀メダリスト)