過酷な取材環境で心に染みた小平奈緒の優しさ「そういえば、入村の時…」
1月31日、北京五輪開幕前のスピードスケートの現地初練習後の取材の終わりに、小平奈緒がこう切り出した。
「そういえば、入村の時、ライトを照らしてくれたのは皆さんですか?寒い中、かなり待ったと思うんですけど、ありがとうございました。分かりやすかったです」
前日は日本選手団本隊の入村。薄暗く、氷点下の気温の中で、カメラマンとともに日本の報道陣が100メートル先を通る日本選手たちを撮影しようと待機していた。こっちを向いてもらおうと、スマートフォンのライトを付けて、頭上で振り続けてアピール。気付いた小平らが手を振ってくれた。完全にこちら側の都合なのに、気に掛けてくれた優しさが染みた。そして、小平はこう続けた。「コロナもあって色々大変ですけど、頑張りましょう!」
2大会連続のメダルはならなかった。1月に右足首を痛めていたという。大会直前、きっと不安もあったと思う。それでもどんな時でも気遣いを忘れない人。さまざまな制約や極寒など過酷な環境での取材。乗り切れたのは、きっとあの言葉があったからのような気がする。強く、優しいアスリートに、心から感謝を伝えたい。(デイリースポーツ・大上謙吾)