不祥事の処分 競技団体で対応に差 なぜ? JOCは「競技団体の判断を尊重」 宮田笙子への厳格対応にお家芸の歴史の重み 賛否も
日本オリンピック委員会(JOC)は19日、代表行動規範によりパリ五輪代表を辞退した体操女子の宮田笙子(19)=順大=について、日本体操協会からの推薦取り消しの申請を受理し、承認した。理由は日本体操協会の行動規範違反。関係者は「大変残念」と話した。
JOCによると、怪我や病気などを除き、選手団の認定を受けた後に取り消しとなった事例は記録に残っておらず、不祥事に取り消しは初とみられる。日本選手団にとっても異例の事態となった。
宮田は6月末から7月にかけて、都内某所でのプライベートの場での喫煙行為が1度、また同時期にナショナルトレーニングセンターの選手宿舎内で飲酒行為があったとし、日本体操協会の西村専務理事は「JOC国際総合競技大会派遣規定、日本協会の行動規範に反する事実が確認した。本人と話し合った結果、オリンピックへの出場辞退に至ったことを報告します。今後、JOCへの参加辞退への申し入れを行います」とした。
最終的には合意の上での辞退とはいえ、聞き取りのために帰国をさせる形となっており事実上の代表はく奪といえる。ただ、一方で他の競技団体では同様の事例で厳重注意。試合出場停止などの処分がなかった件もあり、SNS上では有識者も含め、賛否が分かれる事態となっている。
五輪本大会ではないながら、5月にはスケートボードでパリ五輪予選シリーズに出場した20歳未満の日本の4選手(男女各2人)が現地で飲酒していたことが発覚。厳重注意、口頭での注意などの処分を受けたが、4選手とも五輪代表が決定する6月の五輪予選シリーズ(ブダベスト)には予定通り出場。選手名も公表されていない。
JOCは「選手団はそれぞれの競技団体から推薦の形となっている。各競技団体が私どもの規程なり、編成方針を把握されていますので」と推薦する競技団体の判断に重きを置いていることを強調。体操協会は会見で今回の辞退に至った要因としてJOCの国際大会派遣規程に反したことを挙げていたが、推薦取り消し判断理由は体操協会の行動規範違反のみに限定された。JOC側は「体操協会の判断を尊重する」とした。
体操は日本が誇るお家芸競技の1つで、パリ大会でも男子では複数の金メダル獲得が期待されている。同協会の「日本代表選手・役員の行動規範」では、「『体操ニッポン』という称号は長い栄光の歴史の中で、先人たちの競技成績だけでなく行動により培われたものである。一部の選手や役員の行動により、先人たちが築き上げた栄光の歴史を汚す行為は決して許されない」と記されており、行動規範には「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する」、「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止とする」とある。喫煙、飲酒に対して20歳を超えてまで原則禁止としている競技団体はなく、重い歴史と伝統が厳しい判断を強いたとみられる。