角田夏実が金メダル!パリ五輪日本勢第1号「目をそらしてきたが現実になってよかった」 夏季五輪通算500個目 31歳遅咲きが同階級で谷亮子以来20年ぶりの頂点

 「パリ五輪・柔道女子48キロ級・決勝」(27日、シャンドマルス・アリーナ)

 21~23年世界選手権3連覇女王で、世界ランク4位の角田夏実(31)=SBC湘南美容クリニック=は、決勝で世界ランク2位のバブドルジ(モンゴル)に優勢勝ちし、金メダルを獲得。日本選手団夏季五輪通算500号のメダルを金色で彩った。同階級での金メダルは04年アテネ五輪の谷亮子以来20年ぶり。31歳11カ月での金メダルは日本女子史上最年長となった。

 決勝では2分54秒で宝刀・巴投げをさく裂させ、技ありを奪うと、そのまま押し切った。角田は「(巴投げは)途中なかなか掛からず、対策されてるなと思ったが、最後まで自分を信じた。プレッシャーや不安多かったが、ここで1つ成長できたかなと思います」と喜びを口にし「ずっと目をそらしてきたが、現実になってよかったです」と、安どの笑顔を浮かべた。

 角田は初戦で世界ランク26位のナタシャ・フェレイラ(ブラジル)と対戦し、開始30秒で得意の巴投げで技ありを奪うと、そのまま腕ひしぎ十字固めを決めて、試合開始45秒で一本勝ちを収めた。2回戦でホワイトボーイ(南アフリカ)に1分すぎに巴投げで技ありを奪うと、そのまま腕ひしぎ十字固めで一本。初戦と同じ必勝パターンで1分9秒で快勝した。準々決勝では地元のフランスの選手で、23年世界選手権銀メダルのブクリを完全アウェーの中で巴投げで一本勝ちした。1回戦の試合開始最初にもつれた際に、右目を痛める場面があったが、問題なし。3戦で掛かった合計時間は2分54秒という驚異的な強さでメダルに王手をかけた。

 ただ、準決勝では苦戦。18歳のバブルファス(スウェーデン)と対戦し、延長の末、相手の指導3つによる反則勝ちで決勝進出を果たした。ここまで圧倒的な強さで準決まで進んできた角田だったが、18歳の新鋭を相手に大苦戦。互いにポイントが取れないまま、延長戦へ。その後も互角の展開が続いたが、延長2分55秒に、バブルファスが内股をかけた瞬間に「待て」がかかり、審判は組み合わないという判断でバブルファスに指導。不服なバブルファスは両手を広げ、「なぜ?」と目を見開いて不満を示した。その後も主審に詰め寄ったが、判定は変わらず。角田の決勝進出が決まった。

 角田にとって、31歳11カ月で迎える初の五輪。東京五輪は出場を逃したが、その後の世界選手権では3連覇を果たし五輪切符をつかんだ。本番前、同階級では谷亮子さん以来20年ぶりの金メダル獲得へ向けて「少しずつ緊張感と実感が湧いてきた」と心境を口にしていた。

 3月末に負傷した左膝は万全ではなく、「今年はけがが多くて、まともに練習できていなくて不安がある」と本音も漏らしていた。一方で今できる最善の状態へと気持ちとコンディションを高め、「今の柔道をしっかりやることにフォーカスしてきた。自分の一番のパフォーマンスができたら」と語っていた。

 この階級は「ヤワラちゃん」の愛称で親しまれた谷亮子が2008年北京五輪まで5大会続けて出場し、全て表彰台に立った。日本の女子48キロ級は過去の五輪全8大会のうち7大会でメダルを確保。だが金メダルは04年アテネ五輪で2連覇を果たした谷を最後にいない。

 31歳の角田には、日本勢20年ぶりの復権が待たれていた。国内の厳しい競争を避け、19年に52キロ級から48キロ級へ転向。最軽量級ではひときわ長身の161センチで、スピードのある小柄な選手たちをパワーでねじ伏せた。

 異彩を放つのが、ともえ投げと関節技を駆使する独特のスタイル。二つの必殺技を次々と繰り出し、52キロ級時代はパリ五輪で2連覇を狙う阿部詩(パーク24)に3勝1敗と勝ち越した。「相手のテリトリーに入ったら遊ばれる。蛇のような柔道で不気味だった」と阿部が述懐するほどだった。

 遅咲きの才能がパリの畳で脚光を浴びた。

 ◆角田夏実(つのだ・なつみ)1992年8月6日、千葉県出身。8歳から柔道を始めた。52キロ級では、八千代高2年時に全国高校総体3位に入り、東京学芸大3年時の全日本学生大会で優勝。実業団に進むと、16年講道館杯で初優勝し、初出場の17年世界選手権で銀メダルを獲得した。19年に48キロ級に転向し、同年の講道館杯、GS東京大会で優勝。同級では21年から世界選手権3連覇を果たし、パリ五輪代表に内定した。左組みで得意技はともえ投げ、腕ひしぎ十字固め。162センチ。

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