金メダルの角田夏実、阿部詩も恐れた異色スタイル「不気味」「蛇みたいな柔道」かつて3連敗の天敵「本当に嫌だった」
「パリ五輪・柔道女子48キロ級」(27日、シャンドマルス・アリーナ)
21~23年世界選手権3連覇の角田夏実(31)=SBC湘南美容クリニック=が、決勝で世界ランク2位のバブドルジ(モンゴル)に優勢勝ちし、金メダルを獲得した。同階級での金メダルは2004年アテネ五輪の谷亮子以来20年ぶり。また、31歳11カ月での金メダルは日本女子史上最年長となった。
角田が52キロ時代に“カモ”にしていたのが、後に東京五輪金メダリストに輝く阿部詩(24)=パーク24=だった。当時高校1年だった阿部がシニアで名乗りを上げた2016年の講道館杯で初対戦し、腕ひしぎ十字固めで一本負け。続く同年のグランドスラム東京大会でも角田のともえ投げからの腕ひしぎ十字固めに捉えられ、なす術なく一本負け。さらに、入念に角田対策を練って臨んだ18年の全日本選抜体重別選手権でもともえ投げに屈し、3連敗となった。
阿部は、誰よりも知っている対峙したときの角田の強さについて「不気味なところ」と評する。「蛇というか、軟体動物みたいな柔道で、自分(角田)のテリトリーに入ったら遊ばれる。そういう部分がすごく強い。誰にも感じたことがないものを持っている方」。
角田に3連敗した当時は日本代表になるための最難関の障壁で対戦するのはトラウマだった。「本当に嫌でしたね。どうしたら勝てるのかが見えなくて、自分のやることをやっても技がかからないし、自分を出していったら相手の枠の中に入ってる自分がいて、すごく難しかった」と苦々しく振り返る。
18年のGS大阪大会では、我慢強く指導累積で初勝利を挙げ、東京五輪への扉を開けた。その後、阿部は東京五輪女王に輝き、一方の角田は48キロ級に転向して、世界選手権で3連覇を飾るなど、それぞれの階級で頂点に上り詰めた。かつてのライバルについて阿部は「すごいなと思う。階級を下げて、減量もすごくきつい中で、もうベテランの域に入ってきている偉大な先輩で(そういう決断をして)、本当に柔道が好きなんだなと。楽しんでやっているなという感覚」と頭を下げた。
角田も、52キロ級での東京五輪出場を阻まれた阿部に対し、尊敬の念を抱いているという。「初めてのオリンピックで(強くても)負けてしまう選手が結構多いていうのも聞く中で、阿部詩選手は初めての東京オリンピックでもしっかり結果を出した。やっぱり気持ちも強いし、何か全てが強いんだなっていうのを改めて感じて、自分が東京に阿部詩選手に勝って出たとしても、私にはあの成績は出せなかったなっていうのも感じている。今回は(阿部の)背中を見させてもらってます」。