衝撃敗戦の阿部詩 一本負け直前に異変、生まれた隙 増地監督が指摘「顔に指が入ったか集中力が切れていた」 組み手嫌い後退、捨て身の谷落とし浴びる

 「パリ五輪・柔道女子52キロ級・2回戦」(28日、シャンドマルス・アリーナ)

 2連覇を狙う阿部詩(24)=パーク24=は、2回戦で世界ランク1位のケルディヨロワ(ウズベキスタン)と対戦し、まさかの一本負けに終わり、連覇の夢が絶たれた。準々決勝まで進めなかったため、メダルの可能性も消えた。阿部詩が負けたのは棄権を除けば、19年11月のGS大阪決勝でのブシャール以来約5年ぶりの敗戦となった。

 女子の増地克之監督は「途中に技ありをとって、詩のペースで進んでいたが、相手も技ありをとられていたので、捨て身できたと思う。その中で本当に一瞬の隙を突かれた」と振り返り、「相手の組み手を嫌って、少し後ろに下がってしまった。そこで間合いを詰められて、相手の技を食らってしまった。その前に顔に指が入ったのか、集中力が切れていたのかと感じた。もう少し時間をかけて、指が当たったのであれば、時間をかけて落ち着いてやればよかった」と、敗因を分析した。技ありを奪った直後の残り1分40秒、阿部は目の部分を気にするそぶりをみせていた。

 調子に関しては「いつもどおりだった」とし、シードがなく、2回戦で世界ランク1位と当たった組み合わせについては「もちろんシードがあれば、負けても銅メダルマッチに進めることは確かだが、52キロ級は強豪が集う。どこに入っても厳しい。逆境を覆して結果を残してきた。今回も信じてやってくれるだろうと思っていた。ウズベキスタンの選手だけでなく、この海外の選手は詩をどうにかして倒そうと研究してきていた」と、強調した。

 その上でケルディヨロワを「スピードがあって、組み手も厳しい。簡単に勝てないだろうと思っていた。一瞬だけ相手にチャンスを与えてしまった。勝負はこういうもの。強いから勝つのではなく、勝ったものが強い。相手の阿部に対する戦いを称賛するしかない」とたたえた。

 涙に暮れた阿部詩に対しては「なかなか気持ちを落ち着かせることができない状況。心が痛む。どれだけ五輪にかけていたのかと。これから本人がどうするかわかりませんが、団体戦も控えていますし、五輪も続きますので、負けた悔しさはあると思いますが…」と、慮った。

 2分14秒で内股で技ありを奪ったが、3分4秒に谷落としを浴びて、背中からたたきつけられた。試合後は頭を抱え、呆然。畳を降り、関係者に抱きつくと、声をあげて号泣した。立ち上がることができなかった。会場からは「ウタコール」が起こり、背中を押すように拍手が鳴り響いた。

 兄・一二三とともに兄妹同日連覇を懸けて臨んだ五輪。21年の東京五輪で兄妹での同日金メダル獲得の快挙を達成し、その後の国際大会でも結果を残し続けた。

 22年、23年の世界選手権でも兄妹同時優勝を達成するなど、グランドスラムを含めて国際大会9連勝中。23年6月には兄とともに、これまでの実績から採決なしで五輪代表に選出された。

 大会前には「気持ちを引き締めて覚悟を持って臨むだけ。状態的には大きなケガなく来られた」と、自身2度目の五輪の舞台へ向け、順調な仕上がりを見せていた。

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市兵庫区出身。2人の兄の影響で5歳の時に兵庫少年こだま会で柔道を始めた。夙川学院高1年時の17年GPデュッセルドルフ大会でワールドツアー最年少制覇。同年のGS東京大会では兄・一二三と兄妹優勝を果たした。世界選手権は18、19、22、23年と4度制覇。21年東京五輪では女子52キロ級で日本勢初の金メダルを獲得し、一二三とともに日本勢初の兄妹同日優勝を達成した。日体大を卒業し、23年4月にパーク24入社。18年度デイリースポーツ制定「ホワイトベア・スポーツ賞」受賞。得意技は袖釣り込み腰、内股。158センチ

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