金メダルの阿部一二三 妹の敗戦でより決意「信じられなかったが、僕が取らなかったら誰が取る」「妹の思いを背負って」

 「パリ五輪・柔道男子66キロ級・決勝」(28日、シャンドマルス・アリーナ)

 世界ランク6位の阿部一二三(パーク24)が同8位・ウィリアン・リマ(ブラジル)に勝ち、五輪2連覇を達成した。

 残り2分12秒で技ありを奪うと、さらに袖釣り込み腰で合わせ技一本。文句なしの金メダル獲得に、客席で応援した妹・詩も歓喜の涙を流した。一二三も畳を降りると表情が崩れ、男泣きした。

 一二三は「最高の思いです。この3年、苦しい思い、しんどい思いばかり。そんな楽な道ではなかった」と語り、続けて「きょう妹も負けてしまって、妹の分まで兄が勝たないと思って。苦しかったが、そこは兄としてやるしかない。気持ちは抑えてました」と声を震わせた。

 妹の敗戦が、金メダルへの思いをより強めた。「妹が負けたように、オリンピックってああいうことが起こる。すくんでしまったらダメだ、と自分に言い聞かせて」。アップ会場のモニターで妹の敗戦を確認し、「信じられなかった。僕自身も悔しくいろんな感情があったが、僕が取らなかったら誰が取る。妹の分まで。妹の思いを背負って」と畳へ向かった。

 まさかの2回戦敗退に号泣していた詩。兄の金メダル獲得の瞬間、今度は歓喜の涙があふれた。

 ◆阿部一二三(あべ・ひふみ)1997年8月9日、兵庫県神戸市出身。兵庫・神港学園高2年だった2014年に男子史上最年少の17歳2カ月で講道館杯全日本体重別選手権を制した。日体大に進学し、16、17年に全日本選抜体重別選手権で2連覇。17年世界選手権で初出場優勝を果たし、18年に2連覇を達成。21年東京五輪で妹の詩と兄妹同日金メダルの快挙。22、23年世界選手権も制した。得意技は背負い投げ。168センチ。

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