体操男子 日本が奇跡の大逆転金メダル!最終種目鉄棒で首位中国2番手が2度落下 3・267点差を逆転でリオ五輪以来2大会ぶりの栄光の架け橋

 男子団体総合決勝 最終種目の鉄棒で着地を決めた橋本大輝と喜ぶ日本チーム=パリ(共同)
 鉄棒で着地を決めガッツポーズする杉野正尭(共同)
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 「パリ五輪・体操男子団体・決勝」(29日、ベルシー・アリーナ)

 2大会ぶり金メダルを目指した日本は橋本大輝、岡慎之助、萱和磨、杉野正尭、谷川航の5人で挑み、合計259・594点で最終種目の鉄棒での大逆転で16年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。12大会連続のメダルとなった。0・532点差の2位は中国、3位は米国だった。

 1種目目の床では最初の演技者だった萱が演技をまとめきり、14・000点をマーク。2番手は予選で精彩を欠いた橋本が、予選よりも大きく改善した演技で珍しくガッツポーズを連発。14・633点で、予選の13・733点から大きく得点を上積みしてきた。最後の岡も14・633点で3人の合計43・266点。中国は3人の合計が42・532点で、日本が0・734点リードした。

 しかし、2種目目のあん馬で橋本が痛恨の落下。再開後もやや危ない場面があったが、なんとか最後まで演技を終えた。1点減点もあり、得点は13・100点。演技後は天を仰ぎ、表示された得点を見つめ、悔しそうに顔を手で覆った。萱が14・366点、杉野が14・866点と好演技が続いていただけに、痛いミスとなった。しかし、終わった後にチームメートから「絶対にいける」と鼓舞され、うなずいていた。日本は前半2種目でリードを奪う展開を思い描いていたが、2種目目を終えて、中国が86・098点、日本が85・598点で、0・5点中国がリードを奪った。

 3種目目は中国の得意種目のつり輪。中国の3人は14・933点、14・833点、15・500点とハイスコアを並べた。

 日本は萱が14・000点、岡が14・133点、谷川が14・500点で食い下がったが、中国が131・364点、日本が128・231点で3・133点差まで広げられた。

 4種目目の跳馬では日本が杉野が14・700点、橋本が14・900点、谷川が必殺のリ・セグァン2が認定されず、ドラグレスクと判定されて得点を伸ばせず、13・833点だったが、中国の3人目が大きくミスし、12・766点となり、1・799点差まで詰めた。

 5種目目の平行棒では中国の“平行棒の神”と呼ばれる鄒敬園が異次元の16点をマーク。日本の萱、岡、谷川も健闘したが、再び突き放され、3・267点差で最終種目の鉄棒に向かった。

 最終種目の鉄棒では杉野、岡が好演技を並べると、中国の2番手の選手がまさかの2度の落下。11・600点で、この時点で日本が逆転。日本は橋本が会心の演技で着地もピタリ。14・566点をマークした。中国の最終演技者はまとめたが、日本には届かなかった。選手たちは歓喜の涙を流した。

 27日に行われた団体総合の予選は6種目合計260・594点で、中国に続く2位で決勝に進んでいた。しかし東京五輪個人総合金メダルのエース・橋本大輝は東京五輪で金メダルだった鉄棒で30位に終わり、種目別決勝への進出を逃すなど不調。5月に痛めた右手中指の影響か精彩を欠いた。

 2連覇がかかっていた21年東京五輪の男子団体で、日本はわずか0・103点差で銀メダルだった。橋本を筆頭に、体操ニッポンの威信に懸けて金奪還を目指してきた。

 東京五輪を制したロシアが出場できず、当初から金メダル争いは前回「銀」の日本と「銅」だった中国の一騎打ちとみられていた。

 日本は得意種目が偏らない代表選考で各種目にポイントゲッターがそろい、主将の萱は「世界一厳しい選考を勝ち抜いた最強の5人」と自信を示してきた。

 軸は個人総合で五輪王者の橋本大輝(セントラルスポーツ)だ。G難度の跳躍技「リ・ジョンソン」を組み込む床運動と、F難度の「リューキン」などの多彩な離れ技を繰り出す鉄棒はチームトップのDスコア(演技価値点)。「必ずチームにいい流れを呼び込む」とエースの自覚がにじませていた。

 しかし、全日本選手権後に右手中指のじん帯を損傷し、パリ入り後も左肩に痛みを抱えた橋本の調整が思うように進まず、調子の上がらないまま、本番へ。跳馬での得点を期待された谷川も直前で左足首を痛め、予選、決勝ともミスが続いた。それでも0・103点差に泣いた東京大会から3年。水鳥寿思監督は「Dスコアでは、おそらく中国を上回っている。完成度を求めて勝負していきたい」と歓喜の瞬間を思い描いたが、描かれたのは奇跡だった。

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