奇跡の大逆転金メダル!体操ニッポン主将・萱和磨の妻が明かす夫の熱い一言「奇跡も練習が軸」

 金メダルを獲得した(左から)橋本大輝、岡慎之助、谷川航、萱和磨、杉野正尭(撮影・中田匡峻)
 体操男子日本代表の金メダルに笑顔を見せる萱和磨の妻・星良さん(右)=撮影・中田匡峻
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 「パリ五輪・体操男子団体・決勝」(29日、ベルシー・アリーナ)

 2大会ぶり金メダルを目指した日本は主将の萱和磨、エースの橋本大輝、谷川航(ともにセントラルスポーツ)、岡慎之助、杉野正尭(ともに徳洲会)の5人で挑み、合計259・594点で、最終種目の鉄棒で大逆転。16年リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりの金メダルを獲得した。12大会連続のメダルとなった。0・532点差の2位は中国、3位は米国だった。日本は首位中国と3・267点差で迎えた最終種目の鉄棒で、中国に2度の落下などがあったこともあったが、萱、岡、橋本が3人が完璧な演技でつなぎ、大逆転した。

 奇跡の大逆転をパリの会場で見守った萱の妻・星良(27)さんは『金』への願いを込めて染めた金髪の髪を笑顔でゆらした。「すごく楽しくて楽しくて、楽しいあまり途中の記憶があんまりないんですけど、ずっと笑顔が多いチームだった。全員がすごく楽しそうにやっているのが見えて私も幸せですし、ああいう戦い方をして、すごくみんな苦しかったと思うんですけど、最後最高の笑顔を見せてくれたのが一番の幸せでした」。

 小、中学校の同級生。大学1年で再会し、交際に発展。21年東京五輪後に結婚した。「すごくいろんなことをストレートに言葉にして伝えてくれるタイプだったので、意外と刺さったというか」と夫の魅力を照れ笑いで明かす。昨年4月からは管理栄養士の資格を取るために大学に入学。2度目の学生生活の合間を縫って、パリへと観戦に訪れた。

 萱は試合で技を決めると全力でガッツポーズし、ほえ、熱い言葉で仲間を鼓舞する。そんな人柄がにじんだエピソードがある。今年4月に始まったパリ五輪選考。最終選考会となる5月のNHK杯前に、緊張からか寝付けずにいた星良さんは、ふと思い立って隣の夫に提案した。「インタビューしていい?」。夫は「なに?いいけど」と答えた。

 突然スタートした深夜の“対面取材”。「今し烈な争いがある中で、どういうモチベーションとか、どういう気持ちで日々、やってるの?」と聞いた。返答はきっぱり。「1個しかない。練習。練習に勝るものはないから、練習でしっかりできていて、練習で通し切っていたら、本番ではできるから」と言い切ったという。

 「もちろん奇跡が起きて、1発逆転とかもあると思うんですけど、でもその全てには練習が軸になってくるから、『俺は練習以外、頑張ることはないかな』っていうふうに言っていた」。どんな奇跡にも、その裏には必ず「練習」が存在する。夫の確固たる言葉に不安が吹き飛び、その日は熟睡できた。

 萱はルーティンを非常に大切にしており、入浴は21時30分、就寝は23時と決まっている。それだけに「一番ゴールデンタイムに私がそんなことをするので、次の日にちょっと言われました。『ああいうのは昼間やろうか』って。寝られないからやったんだよと思いながら」と笑って明かした。

 その血のにじむような地道な努力と夫の熱い言葉が、奇跡の大逆転を呼び寄せた。27日の予選では、エースの橋本大輝(セントラルスポーツ)が不調で中国に次ぐ団体2位に沈んだ。「電光掲示板で予選2番っていうのを見て、僕は本当に嫌だと思った」。28日のミーティングで熱い男は言った。「俺たちは2番じゃ嫌だ」-。橋本も「あした死ぬ気でやります」と涙ながらにチームは結束した。

 決勝で、橋本があん馬から落ちても「まだ行けるぞ!!」と熱く応援し、自身は堅実な演技でつないだ。最後の鉄棒は仲間の演技を見守った。諦めない心が、首位中国と3・267点差で迎えた最終種目の鉄棒での逆転劇を引き寄せた。

 自宅のリビングには東京五輪の団体銀メダルと種目別あん馬の銅メダルを置いている棚がある。「金じゃないから飾りたくない」と言った夫に、星良さんは「これを見て次に進んだ方がいいんじゃないかな」と声をかけた。

 パリでのメダルの置き場を問われた萱は「逆にこうなってくると、東京のメダルも一つのストーリーとして僕の人生において生きてくる。しっかり3つ飾りたいなと思います」と万感の表情だった。表彰式でずっと号泣していた熱い男が、人生の夢をかなえる金メダルを笑顔で誇った。

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