大逆転連覇・堀米雄斗 校内スケボー禁止3年間守り通した 高校時代の恩師が明かした素顔「学校では無口で目立たない普通の子」
29日に行われたパリ五輪のスケートボード男子ストリートの決勝で、後が無いトリック5回目で97・08のベストスコアをマークし、合計281・14で五輪連覇を達成した堀米雄斗が驚異の大逆転で東京五輪に続く2連覇を成し遂げた。
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通信制高校のサポート校である聖進学院で、当時の担任を務めた田上光徳さん(59)がデイリースポーツの取材に応じ、堀米の素顔を語った。
2024年6月。田上さんが、パリ五輪の出場権をつかんだ堀米に祝福のLINEを送ると、こう返ってきた。「五輪が決まってから、いろんな人から連絡が来る。先生もミーハーですね」。田上さんとは今でも食事を囲み、多忙なプロ活動で日本滞在が2時間を切るときでさえ、会う間柄。送られてきたメッセージは冷たい言葉ではなく、恩師に五輪切符獲得までの苦悩を漏らしたものだった。
「最初は『ミーハー!?』と思ったけど、それぐらいつらかったんだと思う。五輪(で金を)取って強いから、一番苦しい時に寄り添ってくれる人が少なかったんじゃないかな」。パリ五輪に出発する前には好物のカステラと、寄せ書きを書いた日の丸国旗をロサンゼルスの自宅に郵送し、エールを送った。
出会いは聖進学院入学前の面談。父と訪れた15歳の少年は、スケートボードを持って宣言した。
「アメリカで世界一のスケートボーダーになりたい。10億円稼ぎます」
堀米が最初に確認したことは、板を校舎に持ち込んでいいかどうか。理由は授業終了後すぐに練習場に向かい、滑る時間を少しでも確保するため。田上さんは「学校内とその近辺で滑らないこと。破れば没収」を条件に、持参を許可した。
堀米に影響を受けた生徒が次々と板を取り上げられる中、当の本人は板を脇に抱えて歩く姿しか目撃できない。「どこで滑っているんだ?」と聞くと、「僕はとにかくスケボーがしたい。これがないと困る」と堀米。3年間1度も約束を破ることはなかった。
マナー講座として開いたフランス料理実習で「お水を頂けますか」の次に「おパン頂けますか」と注文し、英語の授業でアルファベットの小文字が分からず、大文字を目に見えないほど小さく書いたことは、今では笑い話。「世界一のスケートボーダーになる」と卒業式でも繰り返した少年は、ロサンゼルスに豪邸を建て、五輪で2連覇を果たすスターになった。
「堀米の勝負強さの理由?それが思いつかないんです(笑)。学校では無口で、目立たない普通の子。エピソードを探す方が難しい」と笑う田上さん。試合当日は深夜に起きて応援した。
「東京五輪後に『おれ聖進でよかったよ』と卒業生から連絡がきたことが、すごくうれしかった。青森山田、大阪桐蔭みたいにたいした学校ではないけど、彼が生徒に夢を持たせてくれたんじゃないかな」。教え子の活躍に、恩師の顔が緩んだ。