重圧背負った日中エース 苦境の中で橋本と張が笑い合った瞬間 張が明かす「どれだけ大変か知っていたから」最後まで爽やかに「人生こんなもの」

 体操男子個人総合で優勝し、金メダルを手に笑顔の岡慎之助(中央)=共同
 体操男子個人総合で優勝し、表彰台で中国選手と記念撮影する岡慎之助(中央)=パリ(共同)
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 「パリ五輪・体操男子個人総合・決勝」(31日、ベルシー・アリーナ)

 初出場の岡慎之助(20)=徳洲会=が6種目合計86・832点で金メダルを獲得した。12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪の内村航平、21年東京五輪の橋本大輝に続き、日本勢は4連覇を達成した。連覇を狙った橋本は6位に終わった。予選1位だった中国のエース、張博恒は86・599点で0・233点差の2位だった。

 大国のプライドを担ったエースの猛追は届かなかった。団体で悲劇的な形で金メダルを逃した中国。譲れない個人総合だったが、張は1種目目の床で途中、着地で前方に倒れ込み頭と手をついてしまう痛恨のミス。13・233点で大きく出遅れた。その後は14台中盤、平行棒では15・300点をたたき出し、岡を猛追したが、あと一歩届かなかった。

 それでも団体後も日本をたたえ、ミスした仲間をかばった紳士は、この日も少しだけ悔しそうな表情を浮かべた後、金メダルの岡をたたえて拍手する姿は人々の心を打った。記者会見では「日本の体操はとても強い。国際大会の結果をみて学ぶことはたくさんある。お互いに学びあえるのは素晴らしいこと。世界の体操はまだまだ向上できるし、自分たちもうまくなれると思う。強い人と戦うことに意味がある。とてもいいライバル関係だと思う」と、日中の関係性に言及した。

 連覇を狙った橋本と、中国のエースの張。互いに敬意を払いあい、切磋琢磨してきた2人だけが分かる瞬間があった。床で失敗した張。直後のあん馬で橋本が落下した。苦しい時間の中で、2人は互いに笑い合ったという。張が「彼が落ちた後、私たちは2人で笑いました。互いにそれがどれだけ大変だったか知っていたから」と明かした。

 張にとっては初めての五輪。決して最高の結果ではなかった。「私はまだ最高の表彰台に立っていないかもしれないが、この24年間、常に自分自身を克服してきた」と誇りを滲ませ「一日一日後悔することはありません。人生はこんなもの。前を向いて生きています。ほかに何ができるでしょうか?」。最後まで爽やかに戦いの場を後にした。

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