パリ五輪日本選手団が緊急声明 相次ぐSNS誹謗中傷に「法的措置も検討」 大会中に異例の警告「不安や恐怖を感じる」自制求める
日本オリンピック委員会(JOC)は1日、パリ五輪を戦う日本選手団(TEAM JAPAN)として大会中としては異例のSNS投稿関する声明を発表した。大会が始まり、競技が進む中で微妙な判定や結果を巡り、アスリート本人や、相手選手、関係者への誹謗中傷が社会問題化しており、「誹謗中傷などを拡散することなく、SNS等での投稿に際してはマナーを守っていただきますよう改めてお願い申し上げます」と訴え、行き過ぎた投稿などについては法的措置も示唆した。
全文は次の通り
「TEAM JAPANからのメッセージ
いつもTEAM JAPANを応援いただき、誠にありがとうございます。応援いただく皆さまへ改めてSNS等の投稿に関してお願いがあります。
アスリートは4年に一度開かれるオリンピックに向けて、自分自身のため、そして支えてくださる多くの方のため、人知れず努力を重ねてきました。
どのアスリートも、一瞬一瞬を無駄にせず、緊張の中で、自身が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、調整して大会に臨んでいます。
中には、試合前にコンディションを見極めて厳しい選択をせざるを得ないこともあります。
どれだけ準備を重ねても、試合では予期せぬこともたくさんあります。
そのすべてを受け入れて、自分にできる最高のパフォーマンスを発揮すべく、アスリートはその場に立っています。
応援いただく皆さまに、是非アスリートがこれまで歩んできた道のりにも思いをはせ、その瞬間を見守り、応援いただけますと幸いです。
オリンピックに臨むアスリートは、相手をリスペクトしています。
体操競技では、自身の演技が終わった後、ライバルが演技を開始するにあたり、口に指をあてて、観客に静かにするよう求める選手がいました。
柔道では、試合の時には納得がいかないことがあっても、競技後に互いの健闘をたたえ合う選手がいました。
スポーツで自身の競技力を高めるには、競い合う相手が必要です。
対戦相手は、戦う相手であるとともに、ともに高め合う仲間でもあります。
そのリスペクトこそが、自身の競技力を高め、スポーツの価値をより高めるものと言じています。
SNS等を通じた皆さまからの激励・応援メッセージは、アスリート、監督・コーチへの大きな力となっています。
その一方で、心ない誹謗中傷、批判等に心を痛めるとともに不安や恐怖を感じることもあります。
TEAM JAPANを応援いただく皆さまには、誹謗中傷などを拡散することなく、SNS等での投稿に際しては、マナーを守っていただきますよう改めてお願い申し上げます。
なお、侮辱、脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討いたします。
皆さまのご理解・ご協力をよろしくお願いいたします」
今大会では柔道での判定を巡る騒動や、試合無いよう、試合後の選手の言動を巡り、誹謗中傷が社会問題化。陸上競歩では個人種目を辞退し、混合リレーに専念する柳井綾音(立命大)が自身のSNSで「たくさんの方からの厳しい言葉に傷ついた。試合前は余計神経質になり、繊細な心になる。批判は選手を傷つける。このようなことが少しでも減ってほしい」などと投稿した。
柔道では28日の52キロ級でまさかの2回戦敗退を喫した阿部詩(パーク24)に対して、大きな反響。海外からも含め、ウズベキスタン国旗が多数投稿されて荒らされている他、ネット上には試合後に号泣して退場しなかったことへの批判の声などが書き込まれた。詩はこの日、自身のSNSに感謝の言葉とともに、「情けない姿を見せてしまい申し訳ありませんでした」と謝罪している。
同じく柔道では、27日に行われた男子60キロ級の準々決勝で不可解な敗戦を喫した永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が自身のXで、対戦相手のフランシスコ・ガリゴス(スペイン)への誹謗中傷を控えるように呼びかけた。永山は「お互い必死に戦った結果なので、ガリゴス選手への誹謗中傷などは控えていただきたいです。審判の方も判断の難しい状況だったと思います」と記した。
今大会ではメンタルヘルス(心の健康)の重要性に注目が集まり、選手村に精神面ケアのスペースを設置するなど、選手の保護に力を入れているものの、被害は後を絶たない状況だ。