張本智和悔しさ滲む「五輪でなければ笑顔で…」世界王者撃破目前も厚かった中国の壁に危機感「次の4年で自分が格上にならなければメダルはない」

 「パリ五輪・卓球男子シングルス・準々決勝」(1日、パリ南アリーナ)

 21年東京五輪男子団体銅メダルで、世界ランク9位の張本智和(21)=智和企画=が中国の同4位で、23年世界王者の樊振東と対戦し、フルゲームの死闘の末3-4で敗れ、自身初の4強入りはならなかった。五輪シングルスでの日本勢史上初の中国人選手撃破まであと一歩まで迫ったが、及ばなかった。

 試合後は「負けた試合の中では満足できる結果」としつつ「これが五輪でなければ、たぶん笑顔で終われた。五輪なのでどれだけいいプレーをしても負ければ0-4も3-4も同じ」と悔しさを滲ませた。

 中国勢の壁を超えられず「これが5ゲームマッチでも1-0で追いつかれただろうし、9ゲームマッチでも3-0から3-3になって、4-4になる。中国に勝つにはやっぱり最後の1ゲームになる。4-0、4-1で勝てる相手ではない。3-3になった時にはコーチにも『4-3じゃなきゃ勝てない試合なんだ』と言ったけど、それでも足りなかった」と、対戦したものにしかわからない感覚を口にした。

 勝敗のポイントについては「3-2の時に、相手のタイムアウトで7-7に追いついたにはあそこで決めるしかなかったかなと思う。自分も流れがよかったので。4-2で勝たなきゃ今日は厳しかったかなと」と、振り返った。

 「いいプレーだったと思う。今日負けては自信は失わない。本当に相手を褒めるしかない」と、手応えを口にした一方で「地力ではどうしても僕の方が格下。次の4年間、あのコートに立った時点で自分の方が格上にならなければ、またたぶん4年後も負けてしまう。4年間で僕が格上にならなければ、メダルはない。次も」と、厳しく足元をみつめた。

 「東京は格下に負けましたし、内容も散々でしたから、まったく納得できない負け。今回はメダルがすべてなので、16だろうが、8だろうが、いいプレーだろうが悪いプレーだろうが、メダルがなければ同じ。でも間違いなく東京よりもいいプレーだったので、このプレーを磨いて、もう4年間磨き続ければもっとよくなると思うので、メダルとれなかった以外は悲観的になる要素はないのかなと思う」と、語った。

 悲願の個人メダルへ、ここまで苦しみながらも突破してきた張本。過去2勝7敗の相手に第1ゲームからエンジン全開で攻めていった。ポイントが入る度に雄たけびをあげて、気迫をほとばしらせながら、強烈なバックハンドを武器に、東京五輪銀メダリストを圧倒。第1、2ゲームを連取した。

 第3ゲームは樊振東のYGサーブへの対応に苦しみ、4-11で落とした。今度は張本が着替えの時間をとり、気持ちを切り替えた。第4ゲームは互いの意地がぶつかりあう展開の中で、終盤に樊振東が強烈なカウンターを連発してリードを奪われ、7-11で落とし、並ばれた。

 しかし、第5ゲーム、再び張本がエンジンを再点火。4連続得点でスタートダッシュを決めると、途中でサーブまでの時間が長いとされて、イエローカードが提示されたが、直後に強烈なフォアハンドをねじ込み、大ガッツポーズ。このゲームを11-4で奪った。

 第6ゲームは樊振東にリードを許し、追いかける展開となり、追撃したが、振り切られ、7-11で落とし、タイに戻された。

 ジャイアントキリングを求める観衆の「ハリモト」コールにのり迎えた、最終第7ゲーム、0-2から4連続ポイントで逆転したが、最後は7-11と世界王者の力に押し切られた。敗戦の瞬間、がっくりとうなだれて、ひざまずいた。

 それでも激闘を繰り広げた若武者に会場からは温かい拍手が降り注ぎ、張本は手を振って応じた。

 もう1人の中国勢、世界ランク1位の王楚欽は、混合ダブルス後に報道陣にラケットを折られる騒動もありまさかの2回戦敗退を喫しており、勝てば日本勢初の金メダルへも大きく視界が開ける一戦だったが、あと一歩及ばなかった。

 ◆張本智和(はりもと・ともかず)2003年6月27日生まれ、仙台市出身。中国出身の両親の下、2歳で競技を始める。日大高を経て早大3年在籍。16年世界ジュニア選手権優勝。17年世界選手権個人戦で8強。18年は全日本選手権など国内外の大会で最年少優勝記録を更新。21年東京五輪団体銅メダル。176センチ。

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