U23西尾隆矢 負けず嫌いのガキ大将が裏でチームを支える副キャプテンに成長

 「パリ五輪・サッカー男子・準々決勝、日本0-3スペイン」(2日、リヨン競技場)

 日本は前半に先制を許すと、後半にも加点されてスペインに敗戦。2大会連続の準決勝進出を逃し、56年ぶりのメダル獲得はならず。8強でパリ五輪を終えた。

 副キャプテンを務めるC大阪・西野隆矢のパリ五輪も幕を閉じた。1次リーグ最終戦のイスラエル戦で先発出場したが、中2日のこの試合はベンチを外れた。しかしU-23での経験は、ひとまわりもふたまわりも西尾を成長させた。4月の五輪最終予選、グループリーグ初戦の中国戦で前半17分にレッドカードで退場。日本は優勝して五輪出場権を得たが、西尾は一時チームを劣勢に立たせてしまったことに責任を背負い込んだ。出場できない期間は裏でチームを支え、鼓舞し続けた。

 西尾が小学生時代に所属した大阪府内のチーム「FCグラシオン」の担当コーチだった岡亮太さん(38)はこの時、西尾を案じてSNSで連絡。「出場停止が明けても出場機会はないかもしれないね、とやりとりした。本人も『チームのためにできることをやります』と言っていた」と前向きな言葉が返ってきたことにホッとしたという。

 小1でサッカーを始めた頃は「わんぱくでガキ大将タイプ」だったと同コーチは回想する。低学年でも体が大きく、上級生に対して物おじしないリーダー的存在だったが「負けず嫌いで4、5年生ぐらいまではうまくいかなければイライラすることが多かった」と幼い部分も見られた。毎回のようにスタッフから「気持ちは分かるけど、イライラしてたらもったいないやろ」と注意され続けたという。反省を繰り返す中で「6年生になるころには、仲間が失敗しても励ませるキャプテンになっていた」と成長。チームの柱として活躍し、中学からC大阪の下部組織に所属した。

 C大阪でも昨年から副キャプテン。任命した小菊昭雄監督(49)は「西尾は去年(J1出場9試合で)苦しいシーズンを過ごし、今春のキャンプもBチームスタート。一度は役目を外してサッカーに集中させようかとも考えたが、懸命にチームを盛り上げる姿を見た時、改めて副将をやってほしいと思った」と振り返る。チームを鼓舞するだけでない。「トレーニングルームが片付いていないことに気付けば片付けたり、飲みかけで置かれたペットボトルを処分してくれたり。そういうのを自然にやる子」と、細かい気遣いも忘れないという。

 C大阪で昨年まで主将を務め、現在は鳥栖に期限付き移籍中の清武弘嗣(34)は「アジア杯でどん底にいたと思うが、チームに戻ってから人一倍やっていたし、あいつの力がなければC大阪はこの順位にいないと思う」と西尾の貢献度を証言する。

 ちなみに、西尾は小学校低学年までサッカーと野球を掛け持ちしていた。「FCグラシオン」の岡コーチが「西尾のお父さんが野球好きで、実は野球をやってほしかったようですが、最終的に彼はサッカーを選んだ。多分、ずっと動き回っていたい性格なんでしょう。野球をやってもプロになれたんじゃないかと思う」と話すほどの運動神経の持ち主。パリの舞台では、その才能を強気な守備として発揮した。次はA代表となって頂点を目指す。

 西尾隆矢(にしお・りゅうや)2001年5月16日、大阪府八尾市出身。FCグラシオンからC大阪U-15に進み、同U-18を経て20年にトップチームに昇格。J1通算79試合で3得点。180センチ77キロ。利き足は右。

パリ五輪最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス