【柴田亜衣氏の解説】銀1つの競泳陣、メダルの数より懸念は自己ベスト出た選手の少なさ 原因分析が重要
「パリ五輪・競泳女子400mメドレーリレー・決勝」(4日、ラデファンス・アリーナ)
パリ五輪の競泳最終種目として行われ、日本(白井璃緒、鈴木聡美、平井瑞希、池江璃花子)は3分56秒17で大健闘の5位に入った。日本の今大会のメダルは男子400メートル個人メドレーの松下知之の銀メダル1つに終わった。アテネ五輪女子800メートル自由形金メダリストの柴田亜衣氏が競泳競技を総括した。
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女子400mメドレーリレーは、順位を下げず泳ぎ切れたのはよかったと思います。世界新を出した米国との差はかなり開きましたが、予選よりタイムを上げた選手もいました。以前の大会でメダルを取れた種目なので、悔しい思いもあるとは思いますが、今回の五輪全体を見ても悪いレースではなかったと思います。
今大会はメダルが男子400メートル個人メドレーの松下選手の銀だけでした。メダルの数は別にしても、元選手である立場から見て、自己ベストを出せた選手が少なかったことが気になりました。予選、準決勝、決勝と進む中で、なかなかタイムを上げられない選手が多くいました。
各国の選手がピークをぶつけてくる五輪では、準決勝である程度の成績を出しておかなければ決勝でタイムは伸びません。100%の力を出すことに慣れておかないと難しいのです。それぞれの選手はベストタイムが遅いわけではないので、本番でそれを出し切れなかった理由を明確にしておくことが今後に向けて重要になってきます。
選手は練習でも毎回タイムを計るので、試合でだいたいどれくらいの成績が出るか予想しています。練習から想定したタイムと本番のタイムが違うなら、その理由を分析することです。何人かの選手が試合後「感覚のズレがあった」と言っていましたが、試合を通してどういうコンディション、メンタルで臨めたかをしっかり振り返る必要があると思います。
久しぶりの有観客の五輪会場で、フランス選手への大声援はとても大きかったかも知れません。しかし松下選手はこの条件で力を出せています。他の選手には不安があったのか。単に「雰囲気にのまれてしまった」というふわっとした理由で終わらせてはいけません。結果と原因を擦り合わせて、気持ちのコントロール、アップの仕方、練習の持って行き方など、今後のレースにつなげることが、当たり前ですがとても大切なことです。
プールの水深が浅かったことも要因にあるかもしれません。ただ、他国には世界新記録や自己ベストを更新した選手もいますから、それを理由に片付けてはいけないと思います。自分に足りないものを見つけて、状況に惑わされない自信と強さを身につけることが必要でしょう。
今大会は松下選手や平井選手ら、10代の選手も活躍しました。平井選手は大会を通していくつものレースを経験し、だんだん力を出せるようになっていきました。4年後のロサンゼルスに向けて、国際大会を積んで力を出せるように成長してもらいたいです。