陸上 田中希実に接触のアクシデント ラスト一周でバランス崩す→11位も救済で準決勝進出「知らなかった」涙とまらず

 1500メートル予選で力走する田中希実(右)=撮影・中田匡峻
 力走する田中希実
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 「パリ五輪・陸上女子1500m・予選」(6日、フランス競技場)

 2大会連続の決勝進出を目指す田中希実(ニューバランス)は11位でフィニッシュ。ラスト一周でアクシデントかと思われるシーンもあったため、審判による救済で準決勝進出となった。

 スタート直後に先頭に立った田中。後続集団をグングンと引き離す姿にスタンドからは大歓声がわき起こった。前半の時点で集団は縦長の展開となり、予選では珍しい形態に。4番手でラスト一周を迎えたが、残り200メートルのところで他の選手と接触があったとみられ、バランスを崩して後方へ沈んだ。

 田中は「途中までは日本記録も更新できるようなペース。いい位置がとれなくて、押し負けてしまったことが敗因」と語った。「日本記録を出すことが目標」と臨んでいたが、「支えてくれた多くの人と一緒に走ることを」と田中。「ラストで気持ちが切れたような走りになってしまったのが申し訳ない」と涙を隠せなかった。その後、審判による救済が認められて準決勝進出が決まった。

 報道陣の取材中にその事実を知らされた田中は「えっ!?知らなかった」と驚きの表情。「敗者復活だと思っていたので…」と声を詰まらせ、「小林祐梨子さんから『自分だけのために走っておいで』と言われて。きょう以上に自分のためにという思いを持って。楽しみ尽くすレースをしたいです」と涙が止まらなかった。

 2日に行われた5000m予選で、田中は15分0秒62で9着。決勝に進む8人に入れなかった。7月1日の記者会見では、目標タイムを1500mでは3分55秒以内、5000mでは14分20秒切りと設定。「日本人には無理だろと思うかもしれないけど、世界で勝負するにはそういうところに向かって行くしかない」と覚悟を口にしたが、5000mでは届かなかった。

 昨年の世界選手権では8位に入賞し、1500mとの両種目で決勝に残ることを目標にしていたがかなわず。「私の五輪が終わってしまったような気持ち。1500メートルだけでも頑張ります、という気持ちにはまだ持っていけない」と落胆を隠せなかった。

 5月中旬には「自分の武器が確立できていない。人によっては『限界』と感じてしまうような、つかみどころのない壁に当たってしまっている」と吐露。6月30日の日本選手権800m決勝で7位に終わった後は「今までで一番いい状態でパリに行けるけど、ちゃんと表現できるか分からない」と涙ながらに不安を吐露するなど、パリまで来る中では、苦悩も抱えていた。

 一方で、7月2日に地元の兵庫県小野市役所を訪れた際は「足を止めない」と色紙に記し、「私らしくいるには脚を前に出し続けるしかないのかなと思う」と語った。「良い顔で帰ってこられるように頑張りたい。東京(五輪の時)よりは戦える位置にいる。チャレンジャーの気持ちを忘れないことが成績につながっていくと思う」と、前向きな心境を述べていた。

 なお、同じ陸上女子1500m代表の後藤夢(ユニクロ)は、兵庫・西脇工高の同級生だ。

 ◆田中希実(たなか・のぞみ)1999年9月4日生まれ、兵庫県小野市出身。同志社大卒。2018年世界ジュニア選手権3000m金メダル。21年東京五輪1500mは日本人初の決勝進出で8位入賞。23年世界選手権5000m8位入賞。1000m、1500m、3000m、5000mなどの日本記録を保持。父はコーチも務める健智さん、母は97、03年北海道マラソン優勝の千洋さん。153センチ。

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