陸上 田中希実を抱きしめた美しき豪州ランナー 東京五輪から成長 田中が声をかけ、2人でたたえ合う胸アツシーン
「パリ五輪・陸上女子1500m・準決勝」(8日、フランス競技場)
予選では接触があり救済により準決勝進出を決めた日本記録保持者の田中希実(24)=ニューバランス=は自身の日本記録に迫る今季ベストの3分59秒70で11着となり、上位6着までに入ることができず2大会連続の決勝進出はならなかった。
レース後、田中は2着で決勝進出を決めたオーストラリアのハルのもとへ駆け寄った。そして言葉をかけると、ハルも笑顔で田中を抱き寄せた。東京五輪以来となる3分台をたたき出すも、周囲のレベルが高く決勝進出を逃した田中。それでもハルから抱きしめられると納得の表情を浮かべた。
ハルは東京五輪の1500メートルで11位だった。それでも3年で大きな飛躍を遂げ、今年のダイアモンドリーグで3分50秒83の自己ベストをマーク。以前から2人で会話する姿が見受けられた2人。再び五輪の舞台で相まみえ、お互いの健闘をたたえあった。
田中は「4分を切るレースになると思っていた。自分だけの走りじゃなくてみんなの走りだということを表現することができた。ただ、最後に出し切れたかというとそこが苦しい展開だった。タイムという面では通れないものだったんですけど、神様のいたずらというかもう1回機会をいただいたおかげで、目に見える形で決勝というところがおみせできなかったのは、すごく残念なんですけど、いつかもう1回絶対立ってみせるという新たな気持ちを作れたレースだったと思います」と、救済から臨むことができた準決勝を振り返った。
東京五輪以来となる4分切りに「もう1度4分を切ることが日本人でも可能なんだということをこの場を借りてお見せすることができて、日本人でも4分切れるとかじゃなく、4分とかそういう問題じゃなくて、どの選手も1秒でも早く前にということしかみていない。中身のつまったレースがあった。そういうレースに自分が最後の100mまで絡めるレースができたら」と足元をみつめ、パリ五輪を「苦しい時間が長かった大会。でも私にとって必要な時間というか、必要な試練であって、理不尽な苦しみではなく与えられるべくして与えられた時間だった。そういった時間を与えられたことがうれしいです」と、涙ながらに振り返った。