「パリ五輪・レスリング女子６２キロ級・準決勝」（９日、シャンドマルス・アリーナ）

　元木咲良（２２）＝育英大助手＝が、ノルウェーのグレースヤコブ・ブレンと対戦。大逆転勝ちで決勝に進出した。

　ブレンは昨年の世界選手権３位で、初戦、準々決勝と圧勝して勝ち上がってきた難敵。第１ピリオド序盤はともに相手を警戒し、膠着する展開。緊張感も漂う中、１分２０秒過ぎにブレンに仕掛けられ、鋭いタックルで崩されて２点を献上した。だが、すぐに反撃し、足を取って両膝をつかせ、２点を奪い返した。

　２－２で第２ピリオドへ入ると、ブレンに右足をつかまれ、崩されて一挙４失点。チャレンジ失敗により１点追加され、２－７となった。劣勢となったが、残り１分４５秒だった。相手が前に圧力をかけてきたところで後方へ投げ飛ばす起死回生の反り投げ。さらにそのままフォールに移行し、相手を抑えて大逆転勝ちした。

　負けたブレンは呆然となり、勝った元木は涙。「世界一になるために、ここで負けたらどうしようと。本当に怖かったが神様が助けてくれた。自分の中では負けたのと変わらない内容」と反省したが、「神様は２回も助けてくれない。しっかり準備して明日に臨みたい」と表情を引き締めた。

　父の康年さん（５４）は２０００年シドニー五輪男子グレコローマンスタイル代表で、親子２代での五輪出場。父親が９位に終わった大舞台に挑む２２歳の娘は「パリでは自分らしく、勝ちたい気持ちを前面に出して金メダルを取りたい」と意気込んでいた。

　準々決勝ではカナダのポーラ・ゴディニェスゴンザレスを圧倒。後半にポイントをたたみかけ、１１－０のテクニカルスペリオリティ勝ちで準決勝に駒を進めた。敗色もよぎる中で、奇跡の大逆転劇。悲願の金メダルに王手をかけた。

◆元木咲良（もとき・さくら）２００２年２月２０日、埼玉県出身。埼玉栄高から育英大に進んだ。２２年は非五輪階級の５９キロ級で世界選手権３位。その後６２キロ級に上げて、昨年の世界選手権で２位となり初の五輪代表を決めた。父・康年さんは２０００年シドニー五輪代表。